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交通事故

高齢者対策が欠かせない

 県内の交通事故死者数の累計は今年も、三百人台を切った一昨年以来の減少化傾向を維持している。このまま推移すれば県警が目標としていた年間計二百五十人以下も達成可能であり、年末にかけてさらに事故防止を図りたい。

 交通事故件数は前年比で五千件以上、負傷者は六千五百人以上も減っている。交通安全に取り組む関係機関・団体や行政などの総合力が発揮された成果といえよう。車両の性能アップや医療機関の整備・拡充も進んでいる。しかし、なお死亡事故の減少化を推進するためには課題がある。高齢者対策である。

 県警交通部の分析によると、六十五歳以上の高齢者が事故死者に占める割合はここ数年、三割前後となっている。人口構成率を大きく上回っている上、死亡事故自体が減少傾向を示しているにもかかわらず、高い割合のまま推移している。

 高齢者の死亡事故の特徴は、歩行中が多く、横断歩道を利用しなかったり横断禁止場所を無理に渡ろうとしたケースも目立つ。

 県警は福祉施設や高齢者が集まる会合などに出向き参加・体験型の交通安全教室を展開している。また、高齢者世帯への戸別訪問も実施している。しかし、体力や生活習慣など個人差があり、指導の難しさが指摘されている。

 子供を対象にした交通安全教育は一般的である。今後は、高齢者を含めた体系的な取り組みが必要になっていることを、社会全体で自覚したい。

 さらに見逃せないのは、車を運転すれば、誰もが被害者にも加害者にもなり得ることだ。

 高齢運転者が第一当事者となった事故で、今年は十一月末までに二十一人が死亡している。加齢に伴う身体能力や運動機能、判断力の低下が、悲惨な事故につながる事例も見受けられる。

 警察庁は新たに、七十五歳以上の高齢者に対して、免許更新時の講習で認知機能検査を導入し、結果を講習の安全教育などに活用することを検討している。制度の細部を詰め、来年の通常国会に道交法改正案を提出する。

 二〇〇二年の改正道交法施行で、認知症と診断された運転手には免許の取り消し・停止の処分が可能となり、今年六月までに計百九十二件が適用された。しかし現状では認知症を把握するには限界があり、本人も知らぬまま運転している場合もあるだろう。症状を自覚することは、早期の治療など予防面にも役立てられるはずだ。

 警察庁によると、昨年の七十歳以上の免許保有者数は一九九五年の二・五倍に当たる約五百四十万人に上る。交通社会も、確実に高齢化している。バリアフリー化や道路標識の大型化などの施設を含め、国として事故防止への環境整備を一層、進める必要がある。



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