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クローズアップ2008:山口ショック、自民グラグラ 暫定税率法案、あす再可決

 ◇暫定税率法案、それでもあす再可決

 何としてもガソリン税の暫定税率は復活させる--。衆院山口2区補欠選挙での手痛い敗北から一夜明けた28日、政府・与党は30日の衆院本会議で造反者が出ないよう、与党の結束維持に躍起となった。自公党首会談では、道路特定財源の一般財源化に向けた与党協議会の設置を確認。一般財源化の担保を求めてきた中堅・若手は、とりあえず30日の再可決に応じる構えだが、「選挙の弱さ」を見せた福田康夫首相が民主党の攻勢をしのぎながら与党をまとめる道のりは険しい。【西田進一郎、田所柳子、近藤大介】

 ◇「造反」鎮圧に幹部躍起--「郵政同様、除名だ」

 28日午前の自民党副幹事長会議。伊吹文明幹事長が「造反をなくしてほしい。(30日の)再可決で造反すれば郵政選挙の時と同じように除名だ」と厳しい表情でクギを刺すと、室内はしんと静まり返った。だれもが05年衆院選での党分裂を思い起こした。

 「道路の一般財源化は、小泉(純一郎)さんでもできなかった。それを福田さんはやろうとしているんだ!」

 「福田さんを総理に出している町村派から反対の声を上げてどうするんだ!」

 28日昼、国会近くのホテルで開かれた自民党町村派の総会。森喜朗元首相は15分にわたって熱弁をふるった。「山口2区ショック」に伴って再可決の決意が揺らぐことへの危機感がありありだった。

 党道路族の有力者でもある古賀誠選対委員長も自派の懇談会で造反防止の必要性を訴えた。「念には念をいれなきゃいけない。結束して党の方針に従って、粛々と堂々と再可決に協力をいただく」

 自民党の各派閥はこの日、所属議員にたがをはめて回った。30日再可決がもたらす逆風を意識してのことだ。

 「完敗した。原因はいろいろあるだろうが、長寿医療制度も大きかった」。福田首相は28日夕、記者団に後期高齢者医療制度への反発が敗北を招いたとの見方を示した。しかし首相は補選で問われたもう一つの争点、ガソリン税の暫定税率については、迷うことなく復活への与党内手続きに突き進んだ。

 午前10時に臨時党役員会、同11時半に臨時総務会、午後は1時に政府与党連絡協議会、3時に自公党首会談、5時に定例役員会。自民、公明両党は暫定税率を復活させるための租税特別措置法改正案を衆院で再可決するための「儀式」を終日続けた。衆院本会議で造反者を出さないための布石でもあった。

 自民党執行部は、道路特定財源の10年間維持を定める道路整備財源特例法改正案を5月12日以降に再可決することにも神経質になっていた。党内の中堅・若手が「09年度一般財源化」という首相方針と矛盾しているとして、造反の可能性をちらつかせているからだ。

 自公の若手議員らで作る「福田提案を支持し道路特定財源の一般財源化を実現する会」は28日午後、総会を開いた。その直前、自民党の大島理森国対委員長は会の中心メンバーである棚橋泰文元科学技術担当相や水野賢一衆院議員らを呼んでこう説得した。「再可決する前の段階で(一般財源化を)閣議にきちんとはかると首相も決断している」

 造反も辞さない構えだった水野氏は、その直後の総会で「前進を図ることができた」と述べ、特例法改正案の再可決を受け入れる考えを示唆。党内「最強硬派」を自称する河野太郎衆院議員も「首相も前向きに対応してくれている」と同調した。

 ◇議員しばる「選挙怖い」--「庶民軽視、負ける」

 衆院山口2区補選での敗北を受け、与党内では、次期衆院選での「選挙の顔」として福田首相への失望感が広がりつつある。

 自民党内では、若手を中心に内閣支持率が低迷する首相の下で次期衆院選を戦うことへの疑問が強い。補選敗北後、若手の一人は「政権発足後の初めての国政選挙だが、敗北によって疑問が実証され、確信に変わった」と話す。

 ただ、党内に衆目が一致する「ポスト福田」候補がいないだけに「首相に辞められても展望がない。当面は我慢するしかない」(別の若手)とのジレンマも抱え、首相に対し、表立った責任論は上がっていない。

 一方、公明党やその支持母体の創価学会にとっても、補選の敗北は深刻なダメージとなった。後期高齢者医療制度の導入が支持層の反発を浴びる中、公明党は太田昭宏代表、浜四津敏子代表代行ら党幹部が相次いで選挙区入りしただけに、敗北はショックを一層大きくしている。

 「補選では、公明党さんにお世話になった。お礼を申し上げる」。28日午後、国会内で開かれた政府・与党協議会。自民党の伊吹文明幹事長と町村信孝官房長官は、公明党の北側一雄幹事長に低姿勢で謝意を伝えた。ただ、同席した公明党の白浜一良参院議員会長は「後期高齢者医療制度の説明が十分でなかった」と不満をぶつけた。

 創価学会幹部は「庶民の気持ちが分からない政権とのイメージが定着してきた。このままでは衆院選で与党は敗北する」と危機感を募らせている。

毎日新聞 2008年4月29日 東京朝刊

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