2004年1月13日(火) 東奥日報 特集

スクランブル

INDEX▼

  
■ パンダ2世に背水の陣/日本・メキシコが共同作戦

 動物園の人気者パンダは、国内で東京・上野動物園など三施設が十頭を飼育している。ところが、日本が所有権を持っているのは上野にいる雄のリンリン一頭だけ。かつてパンダを友好国に贈る外交を展開した中国がレンタル方式に切り替えたためだ。上野動物園は自国のパンダを育てたいと昨年十二月、雌のシュアンシュアンをメキシコから呼び寄せ、子づくり作戦を進めている。

 ▽レンタル料1億円

 パンダは世界でも中国・四川省などの高地に約一千頭しかいないとされる。中国は一九六〇−八〇年代に「パンダ外交」を展開したが、その後はペアを年間百万ドル(一億円余)で貸し出す方式にした。

 日本には七二年にランランとカンカンが贈られ、上野動物園に来園。二頭の死亡で、八〇年にホアンホアン、八二年にフェイフェイが贈られた。この二頭も死んでしまったが、九二年に来日したリンリンは、上野生まれのユウユウと交換されたため「日本国籍」を持っている。

 日本では上野動物園のほか、神戸市立王子動物園で二頭、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドでも六頭を飼育しているが、昨年九月に白浜町で生まれた双子も含め、いずれも中国が所有権を持っている。

 メキシコのチャプルテペック動物園と上野動物園は、米国サンディエゴ動物学協会の支援を受け、二〇〇一年から共同で繁殖事業に乗り出した。リンリンは過去三回メキシコに渡り、シュアンシュアンなど三頭とお見合いしたが、いずれも繁殖に失敗した。

 ▽夏ごろに判明

 パンダは繁殖期が短く、妊娠はペアの相性に左右されやすい。人工授精の技術精度も高いとは言えず、繁殖は難しい。

 上野の関係者は「今度はホームグラウンドで勝負」と力が入る。こうした繁殖計画の背景には「中国のパンダビジネスに巻き込まれず、自由に飼育、研究したい」との思いもある。

 シュアンシュアンを徐々に慣れさせるため、リンリンとはまだ別居中で、発情期を迎える三月ごろまでお見合いはお預けとなる。妊娠が分かるのは夏ごろで、出産した場合、一頭目はチャプルテペック動物園が、二頭目は上野動物園が引き取る約束になっている。

 上野動物園ではシュアンシュアン来日で三年半ぶりにペアがそろい、昨年十二月の入場者数は、この十年で最大の約十六万五千人を記録した。

 上野動物園飼育課の成島悦雄さん(54)は「リンリンは十八歳で、人間なら初老。死んでしまうと、都の財政状況から一億円のレンタル料は払えない。背水の陣で臨むしかない」と話している。




HOME