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【萬物相】和牛

 今年1月、在日中国大使館が日本政府に対し、中国行きの航空機を利用した牛肉の密輸を取り締まって欲しいと要請した。中国が2001年に日本からの牛肉輸入を禁止して以来、中国人の「かつぎ屋」が横行するようになったためだ。上海の浦東空港だけでも、昨年下半期に日本から密輸された牛肉3万トンが摘発された。中国の新興富裕層が「牛肉のキャビア」と呼ばれる和牛の味を覚えて以来、この有様だ。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記も好んで食べるという和牛は、06年に日本が定めた北朝鮮向け輸出禁止品目にも含まれた。

 ニューヨーク・マンハッタンの由緒あるレストラン「オールド・ホームステッド・ステーキハウス」が02年、神戸牛を使った和牛バーガーを41ドル(現在のレートで約4270円)で売り出した。人々は3度驚いた。ニューヨークのステーキの名店が日本の肉を取り扱ったという事実、高い値段、そして柔らかい肉質に。今、和牛のステーキは米国の高級レストランで通常のステーキに比べ2倍の値がついている。あらゆる和牛を持ち込み交配させた米国産の和牛だ。オーストラリアやニュージーランドは和牛を育て輸出しており、イギリスの農場でも和牛飼育ブームが起こっている。

 日本の和牛登録協会は、50年前から和牛の「戸籍」を作り、管理してきた。子牛が生まれたら職員が現場を確認し、生年月日、出産農家、2代上までの父系・母系の血統を記録し、証明書を交付する。協会が保管する「子牛登記」には、指紋ならぬ「鼻紋」が押されている。人の指紋のように牛ごとに異なる鼻面に墨を塗り、拓本のようにして採っている。

 韓牛農家が牛にマッサージをし、音楽を聴かせるのも、和牛の飼育法に由来している。マッサージは、筋肉をもれなく動かしてやることで筋内脂肪、いわゆるマーブリングが均等に広がるようになる。夏には口当たりを良くしようとビールを飲ませ、太らせる最終段階では毎日清酒とビールでお粥を作り、食べさせる。最高級の和牛といわれる神戸産の黒牛を飼育する農家は262戸しかない。飼育頭数は大抵が5頭未満、多くても15頭で、食肉処理されるのは年間30頭だけだ。肉100グラムが10万ウォン(約1万400円)にもなる。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は「最も高い韓牛でも1頭3500万ウォン(約367万円)くらいなのに、和牛は1億ウォン(約1048万円)にもなる」と述べ、韓牛の高級化を指示した。野党は「和牛は極めて特別な農家だけが飼育することができる。韓国の一般畜産農家とはかけ離れた話だ」と反論した。名品化と共に重要なのが、流通改革だ。ディスカウントストアのような中・低価格市場でも韓牛の競争力を保とうとするならば、現在5‐6段階経ている流通過程を減らし、「泡を抜く」必要がある。このところ直接取り引きで値段を大幅に引き下げた地方の韓牛料理店に都市から訪れた人々が列をなしていることだけを見ても、十分に可能なことだ。

オ・テジン首席論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報JNS
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