東京大大学院の入試問題漏えいに関し、東大は28日午後、海洋研究所の浦川秀敏准教授(37)を25日付で懲戒解雇したと発表した。漏えいがあったのは、大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻の07年度修士課程入試。浦川准教授は複数の学生に漏らし、情報を得た学生は全員合格したが、「情報がなくても合格圏内にとどまっている」として、合格判定は見直さないという。
浦川准教授はこの試験の英語担当の出題委員。06年6~7月にかけ、自分の研究室を第1志望とする複数の学生にメールを送るなどして、「入試の傾向が変わったので、話したいことがある」などと呼びかけた。電話をかけてきた学生に、他の出題委員が作成し、入試の論述問題で取り上げた「京都議定書」や「ラムサール条約」の単語をあげ、勉強するよう指示した。
浦川准教授は出題委員会で議題となった問題案を暗記し、受験生に教えたという。大学側の調べに対して漏えいを認めている。動機について大学側は「自分の研究の発展のために多くの学生を確保したいと考えたのでは」と推測。金銭授受はないという。
06年8月に行われた入試は82人が受験し、56人が合格した。学内の調査委員会委員長を務めた平尾公彦副学長は、漏えいを受けた学生数について、「特定を避けるために言えない」と説明せず、東大生が何人いたかについても「明らかにできない」としている。
今年2月、入試問題を知らされて合格した大学院生が、別の教授に漏えいの事実を話し問題が発覚した。
この問題で、元自然環境学専攻長の大澤雅彦教授が半日の減給処分。小宮山宏学長ら3人も給与1カ月分の10%を自主返納した。【山本紀子】
毎日新聞 2008年4月28日 20時17分(最終更新 4月28日 22時31分)