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2008年4月29日

◎高岡中のPTA憲章 広めたい「非モンスター宣言」

 金沢市高岡中のPTAが制定する憲章は、保護者のあるべき姿を示す「行動規範」であ り、教師と生徒、保護者の関係を見つめ直し、学校と家庭の役割を再確認するうえで意義ある取り組みである。

 憲章案は「基本的なしつけは家庭で行う」「様々な問題を他人事としない」「冷静に子 どもの話を聞き、第三者にも確認する」など十項目で構成される。それらが当たり前のように思えてなかなか実践できないのは、学校に理不尽な要求を突きつける「モンスターペアレント」が社会問題化している現実からもよく分かる。

 学校や保育の現場などで親の苦情に関する「対応マニュアル」を策定する動きも広がっ ているが、「憲章」という形で保護者自身がルールをわきまえ、子どもたちの手本になろうとする試みは、いわば「非モンスター宣言」ともいえ、PTAの間でぜひ広めていきたい運動である。

 PTA憲章案の一番目は「親は学校の状態、子どもの様子を知る義務がある」となって いる。中学生は多感な時期であり、小学校時代のように学校のことを逐一、親に話すことはないかもしれない。だからといって親が学校や子どもの様子に無関心でいいはずがない。親の非常識な言動も、突き詰めれば、学校の実情を知らないことによる誤解や思いこみに起因するものが多いだろう。

 むろん、学校に苦情を訴える親を「モンスター」と十把ひとからげにくくることはでき ない。苦情の背景には学校側に原因が潜むケースも少なくないからである。高岡中が策定するようなPTA憲章は、学校への要求や注文が常識に照らしてどうなのか判断する一つの尺度にもなるのではないか。

 憲章案の「携帯電話の使用には最大限に注意する」という項目も大事である。有害サイ トに接続できないフィルタリングサービスも登場しているが、子どもに携帯電話を持たせるなら、親自身がどんな使い方をしているのか関心を寄せる必要がある。携帯電話の利用は非常に悩ましいテーマだが、PTA全体で問題意識を共有することが対応策の一歩となろう。

◎空振り緊急地震速報 能登の体験も生かそう

 初の緊急地震速報はうまくいかなかった。震度5弱以上で出される速報だが、今回の沖 縄宮古島近海で発生した地震は予測以下の震度4だった。せっかくの速報が島民に到達したのは揺れが来た後で「空振り」になった格好である。ことし一月、能登で発生した震度5弱の地震では今回とは逆に震度を小さく予測して速報を出さなかった。ちぐはぐな感は否めないが、能登も沖縄ともに震度は「誤差の範囲内」といい、技術的な課題があることが明らかになった。能登の体験と併せて今後に生かしてほしい。

 利用する速報の受け手側も、最初からすべて完璧な緊急地震情報が出ると思わず、速報 にはある程度の「幅」があると考えていた方が、万一の時にパニックにならないのではないか。被害が出るような失敗の積み重ねは許されないが、経験を積んでその教訓から精度を高めるシステムに育て上げていきたい。

 緊急地震速報は昨年十月にスタートした。速く伝わる地震の初期微動(P波)を検知す ることで、大きな揺れ(S波)が来る前に、被害想定地域に知らせるシステムである。予想震度4以上が対象地区で、本震までに数秒間しかなくても、発電所や鉄道の電流を止めることで大被害を抑えられることが期待できる。半面、デパートや劇場など人が多く集まる場所で突然警報が出るとパニックが起きる心配もある。高速道路で走行中の車も対応が難しい。

 今年一月に能登で起きた震度5弱は、本来なら速報の第1号となるはずだったが、揺れ を震度4と小さく予測したために速報は出なかった。沖縄と能登は逆のケースになったわけだが、気象庁は両地区の地震ともに「誤差の範囲内」としているように、微妙なところで似たケースが発生することは今後もあるだろう。

 しかし、今回の海域は観測網がまばらで、それが誤差発生の一因とされるように、課題 が具体的に分かったことは無意味ではない。沖縄と能登半島の事例を分析して、今後の速報態勢に生かしていきたい。


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