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松下・三洋 提携構想「総合家電」の転機象徴、競争力強化の試金石

 経営再建中の三洋電機が松下電器産業と資本・業務提携する構想が浮上したことは、様々な製品をフルラインでそろえる国内電機メーカーとして生き残ることが難しくなっている現状を象徴している。今後、両社で交渉が本格化するとみられ、日本の電機業界が再編をテコに国際競争力を強化できるかどうかの試金石としても注目される。

(戸田博子、佐々木鮎彦)

再建が進む三洋

三洋電機は大手電機メーカーで9位。かつては、エアコン、掃除機、洗濯機といった白物家電から、携帯電話、デジタルカメラ、テレビに至るまで、他の大手電機と同じように多様な製品群をそろえていた。

 ただ、ブランド力が劣るため、松下やソニーと比べ、やや安い価格で勝負しつつ、一定のシェア(市場占有率)を握る戦略をとっていた。

 しかし、韓国や中国の家電メーカーが台頭して世界レベルの価格競争が激化し、05年3月期連結決算から3年連続の赤字を計上、06年3月には、金融機関から金融支援を受ける事態に追い込まれた。

 金融機関の管理下で再建する過程で、携帯電話事業は京セラに売却、白物家電やテレビ事業も大幅に縮小し、総花的な経営から決別、得意分野に経営資源を集中させる「選択と集中」を進め、08年3月期決算は4年ぶりに黒字転換する見通しだ。

選択と集中

 国内の大手電機メーカーは世界レベルの競争激化に対応するため、事業の選択と集中を加速させている。東芝は半導体と原子力発電所に経営資源を集中し、シャープは巨額投資で液晶工場を建設、韓国のサムスン電子に競争を挑んでいる。

 一方、事業再編が遅れたパイオニアはプラズマテレビのパネル生産から撤退、日本ビクターは国内のテレビ事業を大幅縮小せざるを得ない事態に追い込まれた。ファクトリー・オートメーション(FA)機器に経営資源を集中させ勝ち組とされる三菱電機でさえ、今年、頭打ちの市場で伸びが見込めない携帯電話市場から撤退した。

 こうした中で、三洋電機はリチウムイオン電池が世界トップシェア(市場占有率)の約3割を占め、業務用厨房(ちゅうぼう)機器などにも強みを持つ。

 しかし、リストラを進めたとはいえ、デジタルカメラや白物家電など「コンシューマー部門」が5割近くを占める。一段の経営のスリム化が必要との見方は根強い。自社の技術を生かしながら、さらなる攻めの投資を行って世界での競争で生き残るため、経営体力が圧倒的に勝る松下との提携は有力な選択肢の一つといえる。

松下にもメリット

 三洋との提携には松下側のメリットも少なくない。三洋のリチウムイオン電池など世界的に競争力がある部門は強化が見込め、両社が市場で競っていた白物家電は、三洋電機側がすでに事業を大幅に縮小した。

 また、松下の「公約」も後押しする。「グローバルエクセレンス(世界的優良企業)」を目指す戦略を掲げ、2008年10月には社名を「パナソニック」に変更する。これに合わせて事業規模の拡大を狙い、2010年3月期までの3か年では「連結売上高10兆円」の目標を掲げる。

 しかし、業績が悪化していた子会社の日本ビクターの株式を手放し、08年3月期の連結売上高は8兆7800億円にとどまる見通しだ。「公約」達成に向けて、業界では松下が大型の企業買収に踏み切るとの観測は強い。

 ただ、黒字転換するとはいえ三洋の収益力はまだ課題が残る。不採算部門などのリストラなどを松下から求められる可能性もあり、提携交渉の結論が出るまでには時間がかかる可能性もある。

2008年4月28日  読売新聞)

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