夫殺害、三橋被告に懲役15年判決
おととし、東京・渋谷区で妻が夫を殺害し、遺体を切断した事件の裁判。鑑定で「心神喪失」とされた妻の三橋歌織被告に対し、東京地裁は責任能力を認めて、懲役15年の判決を言い渡しました。 法廷に現れた三橋歌織被告(33)は「白一色」に身を包んでいました。 <では、開廷いたします。あ、座らないで、立っていて下さい。三橋歌織被告ですね?>(裁判長) <はい>(三橋歌織被告) <判決の言い渡しを行います>(裁判長) <(うなずく)>(三橋歌織被告) <被告人を懲役15年に処する>(裁判長) <・・・>(三橋歌織被告) おととし12月、東京・渋谷区の自宅で、夫の祐輔さん(当時30)を殺害した歌織被告。遺体を一人で切断、殺人と死体遺棄などの罪に問われました。 東京・町田市の公園です。歌織被告の渋谷の自宅からおよそ35キロ離れていますが、遺体の頭部はこの公園に埋められていました。捜索に立ち会った歌織被告の前で、土の中から初めて祐輔さんの「頭部」の一部が現れたと言います。 警視庁捜査一課の幹部が自ら手で土を掻きわけ、「頭部」全体を取りだした時、取り乱す様子のない歌織被告を見て、捜査幹部はこう思ったと言います。 <普通の犯罪者なら、自ら殺めた被害者の遺体に直面すると、泣き崩れるものだが・・・>(捜査幹部) 見つかった夫の頭部を前に、歌織被告は促されるまま手を合わせましたが、取り乱した様子もなく、小首を傾げただけだったということです。 「犯行当時、心神喪失の状態だった」。今年3月、検察側と弁護側双方の2人の鑑定医が、殺害当時、歌織被告は刑事責任能力がない心神喪失だったと指摘しました。これまでの公判では、歌織被告の「幻聴」などについても明らかにされました。 <『もう嫌だ』という女性の声がして、ワインボトルを振り下ろした。祐輔さんの頭部を埋めた時は、『ありえない』と祐輔さんから言われた>(歌織被告【検察側の鑑定に対して】) 裁判の最大の焦点は、「歌織被告に責任能力があったかどうか」。28日の判決で東京地裁は、まず責任能力について、証拠などから総合的に検討するべきで、「鑑定結果に拘束されない」としました。そして、鑑定で指摘されたように「当時、幻聴などがあった」として、一定の精神障害があった事を認めました。 しかし、歌織被告に犯行当時の記憶があること。殺害後は夫が生きていると見せかけるメールを送るなど、隠蔽行為を行っていることなどを指摘。その上で、「精神障害は責任能力に影響を与える程ではない」と判断しました。 <頭部を集中的に殴打していて、一定の運動能力と意識の清明さを保っていたと認められる><身元が判明しやすい頭部は自宅から離れた公園に埋めるなど、犯行の発覚を防ぐために合理的な行動をしている>(裁判長) 東京地裁はこうした犯行の実態から、殺害から死体遺棄までのいずれの時点でも「完全な責任能力があった」と指摘したのです。一方で、夫からの暴力が続き、「地獄のような夫婦生活」が犯行に影響を与えたことも認めるなどして、懲役20年の求刑に対して、懲役15年の判決を言い渡しました。 <反省して自分を見つめ直して、立ち直ってくれることを期待しています>(裁判長) 歌織被告は「ありがとうございました」と小さい声で話し、法廷を後にしました。(28日17:54)
|