ゴールデンウイークに里山を散策する人も多かろう。さわやかな新緑の中を、植物や小鳥の声を楽しみながら歩けば心洗われる。
環境省は、この里山を世界の生物多様性保全のキーワードに据える。里山のように自然環境を守りながら利用を進める取り組みを提案する「SATOYAMAイニシアチブ」だ。世界に参加を呼び掛けて両立の事例を集め、持続可能な自然利用の指針をつくるという。
確かに、里山は人と自然の共生という先人の知恵と伝統の産物だ。しかし、現状は高齢化や過疎化、燃料に薪を使わなくなったなどで手入れが滞り、荒廃が広がっている。生態系にも影を落とす。世界の先導役としては何とも気恥ずかしい。
一方で、ボランティアなど心強い動きもある。岡山県出身の民俗学者神崎宣武さんは、先日の本紙で林野庁など主催の「森の聞き書き甲子園」に触れていた。
高校生たちが、森の名手・名人を訪ねて聞き書きする活動だ。森と生きる人々の知恵や技は高校生たちの大きな刺激となったろう。今年が六回目。林業関係の研究や作業に従事している卒業生もいるそうだ。
里山に寄せる若い力の広がりが期待される。同時に「私たちはほとんど努力なくして、負の遺産を次代に渡そうとしている」との神崎さんの言葉が重い。