芸能

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

歌舞伎:新橋演舞場で「四谷怪談」上演 お岩役の中村福助、念願かない挑戦

 鶴屋南北の怪談ものの傑作「東海道四谷怪談」が、5月の新橋演舞場・夜の部で上演される。中村吉右衛門の民谷伊右衛門=写真左、中村福助のお岩で、ともに初役だ。【小玉祥子】

 ◇民谷伊右衛門初役の吉右衛門 弱い人間の「悪」見せたい

 塩冶浪人の伊右衛門とお岩は夫婦だが、伊右衛門はお岩を離縁させようとした父の左門を殺す。伊藤喜兵衛は伊右衛門に恋した孫娘の思いをかなえるため、お岩に顔の崩れる毒を与える。憤死したお岩は幽霊となり、喜兵衛一家を滅ぼし、伊右衛門を死地に追い込む。

 吉右衛門の「四谷」初出演は1965年の勉強会での直助役であった。直助はお岩の妹、お袖に恋する小悪党。73年にも中村歌右衛門のお岩で直助を演じている。「もう伊右衛門を演じる機会はないだろうと思っていました。目にあるのは、おやじ(実父の松本白鸚(はくおう))の伊右衛門です」

 極悪ではないが、流されるように悪事を重ねる。「無責任な小悪党。元来は弱い人間が罪を犯して転がっていくうちに、悪の部分が大きくなっていく、と見せたい。南北らしく、人間がよく描けている。今の時代にもいそうな男です」

 福助は「念願の役」と話す。「四谷」出演の最初は79年の大叔父、歌右衛門のお岩での茶屋の娘役。以来、あこがれ続け、役のために4キロ減量したという。

 「お岩の怖さは、信用していた夫に裏切られた女性の哀れさが裏返ってのもの。それが表れれば、奇をてらわずとも十分にお客様に伝わるはずです。怪談ものではありますが、一人の女性として演じたい」

 「助六」の揚巻、「廓文章」の夕霧など、最近は大役続き。女形として充実の盛りにあり、満を持してのお岩への挑戦となる。

 市川段四郎の直助、市川染五郎の佐藤与茂七、中村芝雀のお袖、中村歌六の宅悦。

 昼の部では、吉右衛門は「一本刀土俵入」の茂兵衛(芝雀のお蔦)、福助は「藤娘」の藤の精を演じる。5月2~26日。問い合わせは03・5565・6000へ。

毎日新聞 2008年4月28日 東京夕刊

芸能 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報