40歳以上を対象に、いよいよ始まったメタボを診断する「特定健診・特定保健指導」。今や「脱メタボ」は年代・性別を超えた国民の合言葉のようにも聞こえてくる。そんななか「脱メタボ」でヒット商品が続出しているのが医薬品業界だ。それも、漢方薬が売れている。最初のヒット商品は06年3月に発売された小林製薬の「ナイシトール85」。初年度の売上が35億円、発売からの総売上は約90億円。10億円以上売れればヒットと呼ばれる一般大衆薬(OTC医薬品)分野で大ヒットを記録し、漢方薬への認知度も上げた。「この商品は18種類の生薬を漢方処方した防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)という肥満症の改善薬で、ユーザーの中心は中高年男性です。『痩せる』というと従来は若い女性がメインでしたが、メタボに対する認知度が広がるにつれ、男女を問わず健康体の維持という意識に変わったと感じます。おだやかな効き目を持つ漢方薬の特徴もヒットした理由の一つでしょう」(小林製薬・広報部)。有効成分である防風通聖散は体の老廃物を尿や汗とともに排出、また脂肪の分解・燃焼を促し肥満症を改善する効能を持つ。便秘に対して効果もあり、作用が強く現れる場合もあるので下剤との服用は控えてほしいなど、服用の際の注意事項をホームページでも詳しく紹介している。ちなみに、同社は3月26日に血液をサラサラに改善する大衆薬「ドルチトール」を発売。これはコレステロール(血中脂質)の改善薬で、こちらも売上は順調だ。
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ロート製薬が06年11月に発売した漢方薬シリーズ「和漢箋」も大ヒットを記録した商品。発売後1年で売上は30億円を超えた。このシリーズは全部で7種類だが、「溜まった脂肪を落とす」効果がある「防風通聖散錠」が売上の約8割を占める。「ユーザーは男女半々ぐらいです。大ヒットの理由は3つ。一つ目は難しい処方名だけで、どれが自分の症状に合うのか分かりにくかった漢方薬を、一目で効能が分かるパッケージに工夫したこと。二つ目は錠剤をサプリメントのようにパウチタイプで発売し、1週間分から試せる小袋も発売したこと。三つめは、その効果を実感していただいたことです。ユーザーからは『よく効く』という喜びの声が沢山届いています」(ロート製薬・広報調査室)。同社では、一般用の漢方薬ではほとんど実施されていない臨床試験も実施。その結果も公表している。
ドラッグストアの売場を覗いてみると、男性向けに「脱メタボ」を呼びかける大きな看板の前に、「ナイシトール85」「ドルチトール」「新コッコアポS」(カネボウ薬品)などが山積みにされている。一方で、女性を意識したおしゃれなパッケージの「和漢箋」シリーズや「漢方セラピー」シリーズ(クラシエ薬品)などが違う一角に並んでいたり。漢方薬売場もすっかり様変わりしている。
コンビニ業界も「脱メタボ」シフト今月、低カロリー商品が続々登場!
三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、2005年に2兆円だったメタボ関連市場は2010年には3.6兆円に拡大すると予測。とくにメタボに関心が高まる08年には、メタボ関連対策ビジネスが大きく拡大すると予測するシンクタンクも多い。そして今月、大きな動きをみせたのがコンビニ業界だ。これまではコンビニのフードメニューは、若者向けに、こってりとボリュームのあるものが中心だったが、「脱メタボ」をテーマにした新商品が続々と登場。メタボ商戦が過熱している。
サークルKサンクスは4月8日に、従来から発売している「バランス食堂」シリーズに、より低カロリーな肥満防止型の新商品「発芽米入りパエリア弁当」(500円)を発売。ファミリーマートは4月から200kcal以下におさえたサンドイッチなど43品目を中心に「春カラダフェア」を実施中だ。ローソンは、メタボが気になる男性向けに「ドカ盛サラダ」(450円)を発売。16種類の野菜が約350g入っていて、1日に必要な野菜のほぼ全量を摂取できるという。セブン-イレブン・ジャパンも食物繊維やイソフラボンを豊富に含む「黒豆入りさつま芋のおむすび」(115円)などを発売。各社が工夫を凝らした「脱メタボ」商品の開発競争が続いている。
サークルKサンクスが30〜40代の男女1174人を対象に実施した調査によると、40代男性の6割は「自分がメタボまたはメタボ予備軍」だと考えている。40代後半男性では何と7割超にもなる。女性も40代では5割だ。しかも、男女共に4割以上が、「メタボ対策は何もしていない」。この調査結果からも「脱メタボ」商品の潜在的な需要は相当あると思われる。
自転車通勤・ツーリング派急増でクロスバイクが売れている!
「脱メタボ」のための有酸素運動として、最近見直されているのが自転車運動。自転車通勤をする男女も増えていて、スポーツ自転車の売れ行きが好調だ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアントのクロスバイク「エスケープシリーズ」も人気商品の一つ。「クロスバイクはロードバイクとマウンテンバイクの中間で、長距離の通勤・通学に向いています。ここ5〜6年の健康ブーム、自転車ブームが追い風になって、毎年4割増の売れ行きです。ユーザーの7割は男性ですが、女性も増えています」(ジャイアント・製品企画課)。服装を選ばないシルバー系を主体にした優しいカラーリングであることや、いわゆるママチャリに比べてスタイリッシュに見えることなども人気の理由。週末にカップルでツーリングを楽しむ人も多いという。
実際に「自転車でメタボリック症候群が解消できるのか」という実証実験をしたのが、自転車用部品メーカー最大手のシマノ。名古屋市立大学大学院・高石鉄雄准教授をアドバイザーに迎え、07年8月から3カ月間、公募で集まった、メタボ自覚者、もしくは健康づくりに関心のある30〜50歳代の約50人の同社の社員を対象に実施したものだ。その結果、メタボ傾向が高いモニターは全員が血中インスリン濃度が基準値内に改善。中性脂肪、善玉コレステロール、血圧は半数以上のモニターに改善がみられた。また、週に1回、2回、3回と乗る回数が多い人ほど、体重や体脂肪が減少した。シマノではこの実験結果を踏まえ、今後も自転車の健康効果を社内外にアピールしていく予定だ。今後、社員のメタボ対策に自転車通勤を奨励する企業が増えてくるかもしれない。
(文/志水京子)
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