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ドルコスト平均法の効力

2008年04月28日

 投資信託の投資手法として、ドルコスト平均法というものが挙げられる。この手法は毎月定額で投資信託を積み立てることにより、安いときに多くの口数を買付け、高いときには買付口数を少なくするという一種の逆張りだ。今回はこの手法の有効性について考察したい。
 まず、国内株式、海外株式、海外債券、海外REIT、新興国株式で過去10年間、積み立てを行なった場合と一括で買った場合の損益率のシミュレーションを行なうと、結果は図表(1)のようになる。


図表(1):積立投資と一括投資の損益率
図表(1):積立投資と一括投資の損益率
※出所
モーニングスター、ブルームバーグのデータを基にモーニングスターが作成。
算出期間は1998年2月末から2008年2月末、使用した指数は以下の通り。
国内株式:TOPIX、海外株式:MSCIコクサイ(円ベース)、海外債券:シティ世界債券インデックス(除く日本、円ベース)、海外REIT:S&Pシティ・グローバルREITインデックス(配当込み、除く日本)、新興国株式:MSCI エマージング マーケッツインデックス(円ベース)



 これを見ると10年間の累積の損益率で一括投資を上回っているものは国内株式、新興国株式となっている。この二つの資産の過去10年間の特徴として挙げられるのは、一括投資した場合の累積リターンが0%を中心に上下していたことや、大きく下落してから戻してきたということだ。たとえば、国内株式は過去10年間、激しい上下動を繰り返しながら累積リターンは▲1.7%と、元本とほとんど変わらない水準にある。一方で海外株式は2000年12月末から2005年10月末にかけて、新興国株式は、2004年11月末まで大幅下落から累積リターンが0%に戻る動きを示している。では一括投資が積み立て投資に勝る局面というのはどのような場合であろうか。特に大きな差が付いている海外債券と海外REITを見てみると、一方的に上昇相場が続いているという点が挙げられる。海外債券は長い間の円安が利いており、REITは米国の不動産バブルの恩恵を受けたことが影響している。双方が有利な場合をまとめると図表(2)、図表(3)のようになる。




図表(2):新興国株式の損益率
図表(2):新興国株式の損益率
※出所
モーニングスター、ブルームバーグのデータを基にモーニングスターが作成。
算出期間は1998年2月末から2008年2月末。
新興国株式:MSCI エマージング マーケッツインデックス(円ベース)




図表(3):海外REITの損益率
図表(3):海外REITの損益率
※出所
モーニングスター、ブルームバーグのデータを基にモーニングスターが作成。
算出期間は1998年2月末から2008年2月末。
海外REIT:S&P シティ・グローバルREITインデックス(配当込み、除く日本)



 上記に挙げたパターンから分かることは、相場が一方的に上昇する場合には、一括で投資する方が高いパフォーマンスを上げられる。一方、積み立て投資は下落基調で損が相対的に少ないことに加え、下落して元本に戻るだけでも収益が得られるということだ。実際に過去5年のように円安、株高、不動産バブルで株式、債券、REITが共に好調だった局面では、積立投資は収益機会を逃すだけの手法に過ぎなかった。しかし最近、半年間の下落相場の中では、違う見方が出来る。下落相場では積立の方が相対的に損失が少ないことに加え、価格変動が激しいため、さらに積立のメリットが生かせる。図表(3)の海外REITの損益率の推移を見ても、2007年5月末に一括投資の累積リターンが積立と69.35%もの差があったものの、2008年3月末には45.35%の差とわずか10ヶ月で大きく差が縮まった。
 価格の動きのほかに最大下落率の観点で見ると、図表(1)にあるように5資産全てで積立の最小リターンが一括のそれを下回っている。また、一括の場合には、海外債券を除く4資産で最大下落率が30%を超えるなど、心理的にも売り衝動に駆られてしまう状況が現出する可能性が高い。
 このように、積立投資を行なった場合と一括投資を行なった場合の違いを見てきたが、過去3〜5年間の海外の株式、債券、REITの一方的な上昇相場から一転している今、ドルコスト平均法の効果を改めて確認してみてはいかがだろうか。

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