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社会科学系院生の問題意識

2008-04-17 02:46:41 | Weblog
最近、哲学・社会科学の基本的文献を読む。

大塚久雄『社会科学の方法』(岩波、1966)では自身の社会科学の考え方が正しいと確認。その内容はウェーバーとマルクスの体系の解説。今日、53刷、世の中でよく読まれている確実な書。

大江健三郎が30歳の時に書いた『ヒロシマ・ノート』(岩波、1965)も参考。今日、83刷、人々の心を掴む大きな魅力を備えた内容。

前年、自身のお子さんが正常でない状態で生まれて絶望の中で小説『個人的体験』をまとめ、つぎの仕事として、絶望のまま、「世界」編集部の安江良介氏と広島を訪問。そのレポート。実によく人間を考察し、重厚な社会科学の論文になっており、改めて大江氏の実力を再確認。論文まとめの方法として採用。そのような視点と方法は自身のものにしなければ。

大江作品は、人間の根源的な「生きる力」をテーマにしていますが、それは、自身のお子さんへの愛と苦悩をとおし、人一倍、人間に対する優しさのようなものが育まれた結果。実に力強い作品に仕上がっており、元気をいただきました。
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なぜ倍もの核分裂性物質が利用されたのか

2008-04-15 15:00:59 | Weblog
世の中の知ったか振りした素人(核計算の経験もない物理学者や軍事評論家)にふたつの質問。広島・長崎原爆ともわずか1キログラムの核分裂性物質しか燃焼していない。設計の精度を検証するためのウランやプルトニウムによる臨界実験はマンハッタン計画において実施済み。(1)高速核分裂を利用した広島型原爆のウラン235臨界量は、約30キログラムであるが、設計の不確定や高温でのドップラー効果による負の反応度の印加を考慮しても3割増しで十分であるにもかかわらず、なぜ、倍の60キログラムも使用されたのか。(2)同じく、高速核分裂を利用した長崎型原爆のプルトニウム239臨界量は、約8キログラムであるが(爆縮すると4キログラムで臨界)、設計の不確定や高温でのドップラー効果による負の反応度の印加を考慮しても3割増しで十分であるにもかかわらず、なぜ、臨界量の約3倍の12キログラムも使用されたのか。これらの質問に答えよ。
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イリジウム192の持ち出しがなぜレベル2なのか

2008-04-12 19:59:33 | Weblog
行政側は、何の根拠か知らないが、先に記したイリジウム192の不祥事を国際事故尺度のレベル2に定めた。過去の事象分類からして、今回の判断根拠がよく分からない。レベルの決定には、働いた安全装置の程度、労働者被ばく、環境への放射能放出の三点が総合的に考慮されて決められるが、今回は、遮蔽容器に納められた放射性物質が盗み出されただけ。そのため、まだ、誰も被ばくしていない。10年以上も停止を余儀なくされた「もんじゅ」の不祥事がレベル1+だから、今回の不祥事がそれ以上とは、どのように考えても位置づけられない。おかしいのではないか。
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JCO地裁判決の感想

2008-04-12 17:12:22 | Weblog
JCO臨界事故からまる7年。JCO施設からわずかしか離れていない住民が健康不調を理由に訴訟を起こし、その地裁判決が下された。いまの科学からすれば、事故による中性子被ばくにより、健康被害が出るほどでないことは、争うことのない真実かもしれない。しかし、それだけですべてを汲み尽くしていいのか疑問。と言うのは、事故が原因の精神的ショックから、体調不調に陥ることは、よくあることで、それすら認定せず、何の保証もしないというのが、正常な社会対応なのか、大いに問題とすべきことではないか。
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原子力資料情報室の技術力

2008-04-10 22:13:57 | Weblog
原子力資料情報室の上澤千尋(かみさわちひろ)は横須賀寄港予定の原子力空母の原子炉の事故の危険性を証言。以下、同室HPより部分引用。

「原子力空母の原子炉を冷却するための海水取り入れが、座礁や海面の低下によって困難になり、原子炉が緊急停止したり、原子力空母が原子炉停止した後にも、崩壊熱を除去するための施設である発電所、変電施設、純水工場等が、地震により同時に破壊され、原子炉の冷却が困難となる。さらに米海軍が原子力空母の安全性に関するファクトシートで主張する非常用安全システムとしての艦内の非常用補助電力システムも、地震時にダメージを受け作動しない可能性が十分にあること。また自然対流のみにより冷却する崩壊熱除去システムも、海水による緊急炉心冷却装置も、地震時に作動する保障はない。・・・その場合、風下7キロ以内の住民は、放射能障害によって全数致死、13キロ以内の住民は半数致死等、さらに首都圏165キロ以内の住民が、職業人限度の50ミリシーベルトの被曝に見舞われ、100万人以上の死亡が予測される。」

上澤君!、原子力空母の原子炉は、本当に、炉心冷却や緊急炉心冷却装置の水源に海水を利用しているのですか。海水を直接利用(文章からはこのようにしか解釈できませんが)するとどのような不都合が生じるかご存知でしょうか。海水が利用できるのは、せいぜい、タービンから出た蒸気を水に戻すための復水器の冷却用です。

さらに、仮に、そのような想定地震が発生しても、それほど多く死亡しないでしょう。100万人以上死亡の根拠が知りたいものです。それは、単純なモデル(米国物理学会軽水炉検討グループが議論したくさびモデル)を利用して機械的に算出しているのでしょうが、桁外れの過大評価になります。これまでその方法で日本のいくつかの原発の災害評価をしてきたのでしょうが、それは、技術の世界でなく、運動論の世界でしょう。それもひとつの人生。しかし、裁判は、非常に厳しい学問の世界ですから、絶対に勝てません。

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平均原発設備利用率に赤信号

2008-04-08 20:59:43 | Weblog
原発の経済性は設備利用率60パーセント以上で成立。欧米先進国の平均設備利用率は80-92パーセント。しかし、日本の昨年度の平均設備利用率は、1970年代の初期の低迷期のレベルの60.7パーセント。原因は東電柏崎刈羽発電所7基が停止したこと。いくら地震という自然災害が原因とは言え、この低迷は、原子力界にとって、非常にショックな現実。
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非破壊検査会社のイリジウム192盗難の危険性

2008-04-08 01:31:41 | Weblog
4月7日午前、千葉県にある非破壊検査会社から放射性同位元素のイリジウム(Ir)192が盗まれた。イリジウム192は、鉄製の放射線遮蔽容器に収納されており、いまのままならば、人体への影響なし。

イリジウム192は、直径約1ミリメートルの天然イリジウムの線に原子炉内で熱中性子を照射し、Ir191(n,γ)Ir192反応で生成。その反応断面積は1100バーン。イリジウム192は、半減期74日、強い316,488keV等のガンマ線を放出。

使用目的は、イリジウム192からのガンマ線を金属の構造物に透過させ、金属内部の亀裂・欠陥等の有無の確認。

非常に強い放射能を有しており、遮蔽容器から取り出して身辺に置けば、放射線障害どころか、死亡する。非破壊検査用のイリジウム192が産業現場から盗まれたり、運搬途中で紛失し、これまでに国内外で多くの被ばく・死亡事故発生。

遮蔽容器内には、直径約2ミリメートル長さ約10センチメートルのステンレススチール管にイリジウム192が密封されている。ピカピカに光っていて高価感があるため、何も知らない人は、家庭に持ち帰り、居間等に置くと、家族全員が死亡することもある。特に赤ちゃんへの影響は、早く、大きい。危険性が高いため、絶対に遮蔽容器から取り出してはダメ。盗んだ人は出来るだけ早く警察へ届け出ること。死亡事故につながるため、ステンレススチール管をどこかに放置するな。

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文部科学省不祥事の深層構造

2008-04-07 12:36:05 | Weblog
各省庁の官僚は、暗黙・無圧力の支配権を利用し、管轄下機関・企業から、日常的に便宜供与を受けている。今回の不祥事が発覚する前、私は、いくつかの事例を挙げ、文部科学省に告発の手紙を送り、なおかつ、省内の不祥事を握りつぶして隠蔽する可能性があるため、総務省にも適切な行政指導をするように告発の手紙を送った。各省庁とも、官僚が受けている年間便宜供与額は、1億円にも達する。今回公表された50万円というのは、氷山の一角に過ぎぬ。
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原爆プルトニウムにはなぜ微量ガリウムが含まれているか

2008-04-06 20:01:37 | Weblog
世の中では、核計算の経験すらない物理学者や軍事評論家のようなその分野の素人が、知ったか振りして、原水爆について、似て非なるレベルの低い解説をしている。相変わらずマンハッタン当時の情報を基に解説している。それでは彼等にひとつ質問。原水爆用プルトニウムには、なぜ、微量のガリウムが含まれているのか、その理由と具体的な個数密度(n/cc)を回答せよ。
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核戦争防止国際医師会議『プルトニウム』の読後感

2008-04-06 01:00:36 | Weblog
この本(ダイヤモンド社、1993)は既刊本。多くの文献引用、基礎的解説、世界の軍事プルトニウム生産施設解説等、分かりやすくまとめられており、素人の私には有り難い内容。

p.32には長崎に投下されたプルトニウム原爆の芯となった直径8センチメートルのプルトニウム球の模擬ガラス玉の写真が掲載されている。重さは異なるが、ソフトボール大の大きさ。

直径8センチメートルでは未臨界。通常状態で臨界にするには直径10センチメートル以上なければならない。しかし、爆縮用高性能火薬で直径8センチメートルのプルトニウム球をピンポン球くらいの超高密度にすると、超臨界状態となる。

p.6には長崎に投下された原爆の全体写真。高さは人間の背丈より高く、長さは背丈の二倍強。重量5トン。爆縮用高性能火薬2.5トン。構造材は鉄、火薬は密度が鉄よりはるかに低い。よって、火薬2.5トンだと、全体容積の大部分を占める。このことから爆縮の困難性が読み取れる。

その後は、コンピュータを利用した設計が可能なため、最適設計ができ、はるかに小型で少量の火薬利用になった。
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