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腎臓移植:比政府禁止検討 貧困ゆえ、摘出 「臓器売れば豊かに」甘言にすがり

 事実上の臓器売買による外国人への腎臓移植が国内外の批判を浴びるフィリピン政府は、外国人への腎臓移植を禁止する方向で検討に入った。だが非人道的な臓器売買を後押しするのは、臓器を「売る」側の住民の貧しさだ。マニラ市内のスラム街に、昨年7月に腎臓をカナダ人に売ったという港湾作業員、ヤップさん(30)を訪ねた。【マニラ矢野純一】

 ◇「闇取引残るだけ」

 「制度を変えても闇取引が行われるだけだ」。ヤップさんは、当たり前だというように笑い飛ばした。「政府に監視なんてできないし、金を渡せば何でもできる国だからだ」という。

 近所に越して来たばかりの病院の清掃作業員と名乗るブローカーから、11万5000ペソ(約27万6000円)で売買を持ちかけられた。妻と4人の子供を抱え収入は1日350ペソ(約840円)。ルソン島西部アルバイ地方にある実家が売り払った農地も取り戻せるうえ、生活も豊かになると即断した。「片方だけでも生活に支障は無い」というブローカーの言葉も後押しした。

 しかし、手術後、生活はむしろ苦しくなった。息切れして、力が出なくなった。左のわき腹から背中にかけて残る30センチほどの傷跡は今も痛む。

 手術後に受け取った謝金もブローカーに手数料を差し引かれ、手取りは結局9万ペソ(約21万6000円)。実家への送金とテレビを買っただけ。「一日だけの金持ちだった」

 「私の腎臓で人の命を助けたので誇りに思っている」と自分に言い聞かせるように話したあと、「自分の子供たちには同じことはさせたくない」とポツリと漏らした。

毎日新聞 2008年4月28日 東京夕刊

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