9年前、山口県光市で起きた母子殺害事件の差し戻し控訴審で、犯行当時18歳だった元少年に22日、判決が言い渡されます。死刑を回避する特別な事情はあるのかどうか、審判が注目されます。
「9年という長い歳月がかかってしまいましたけど、遺族全員の希望ではございました死刑という判決が出ることを今は信じて、その時を待っております」(遺族 本村 洋 さん)
事件が起きたのは1999年4月でした。本村洋さんの自宅アパートに、当時18歳の元少年が排水検査を装って上がり込み、妻の弥生さんと娘の夕夏ちゃんの首を絞めて殺害。弥生さんの遺体を乱暴したとされています。
27歳になった元少年。今月初め、JNNの記者と面会しました。
<死刑もやむを得ないと思う?>(記者)
<はい。僕は死刑存置主義者ですから。終身刑も検討してほしいと思っていますけどね。ただ判例として僕が死刑になるのは避けたい。ほかの少年少女の事件にも大きく影響するんですから>(元少年)
元少年には一審と二審で無期懲役の判決が下されましたが、2006年、最高裁は「特別な事情がない限り死刑を選ぶしかない」として二審判決を破棄、審理を広島高裁に差し戻しました。
「殺人事件ではない。傷害致死事件である」(元少年の主任弁護人 安田好弘 弁護士)
差し戻し控訴審で元少年の弁護団は最高裁の認定事実を真っ向から否定し、「殺意や乱暴目的はなかった」と主張しました。
<苦しい面もあるよ。弁護団が21人もいたら考え方が違うんだよね。でも仕上がりはいいようになったと思っている>(元少年)
元少年は、遺体への性的暴行は「生き返ってほしい思いから」だと法廷で証言。遺体を押し入れに入れたのは、「ドラえもんが何とかしてくれると思ったから」だと述べました。
<差し戻し審の主張は弁護団が言わせたとも言われているけど?>(記者)
<それは誤解です。彼らは僕が自発的に言える舞台を整えてくれたんです。僕から真実を引き出してくれた>(元少年)
公判を傍聴した作家の佐木隆三さんは、「元少年が真実を語ったとは思えない」と言います。
「拘置所で長く拘束されていた若者が一生懸命練ったストーリーのつもりだろうが、やはり随所にほころびが出ている。被告・弁護側にとって最悪の判決が出ても仕方ない。自ら招いた事態とも言える」(差し戻し審を傍聴した 作家 佐木隆三さん)
一方、傍聴した大学教授は、一部の事実関係をめぐる審理では「弁護側に分があった」と感じています。
「特に憶えているところでは、(弥生さんの)殺害方法の問題ですね」(差し戻し審を傍聴した 広島大学 吉中信人 教授【刑事法】)
弁護側は、元少年が両手で弥生さんの首を絞めたとする最高裁の認定事実を否定し、遺体の所見をもとに右の逆手で首を押さえたと主張しました。
「逆手でも殺意を認めることは可能だが、順手に比べると確定的な殺意という点では薄まる。当然、量刑判断に影響してくる」(広島大学 吉中信人 教授【刑事法】)
検察側が、「元少年は真摯に反省していない」として死刑を求めた一方、弁護側は、「精神的に未熟だった元少年に大人と同じ責任は負わせられない」と主張しました。
「胸を張って墓前に語りかけられる判決であることを願っている」(遺族 本村 洋 さん)
判決公判は、22日午前10時から開かれます。(21日18:12)