2008年4月26日

試合前にGMのパットが、深刻な顔をしてやってきました。
「ソウ・・・MLBからの警告に名前が載ってるぞ・・・」

何もやましいことはしていません。薬物もやっておりません。
至って健全なこの私。それでもハラハラしてしまうのは、悪いことなど
これっぽっちもしていないのに、警察を見かけるとなぜかドキドキしてしまう、
あの感覚に似ています。

神妙な顔のパットが手にした白い紙。そこには確かに僕の名前と「罪状」が記載されていました。
「ソウ・タグチ・・・バッターボックスに入るのが遅い」

はあ〜？

目を白黒させている僕に、してやったりとパットが笑って
言いました。
「びっくりしたろー！？これは、試合を長引かせる原因になることをしている
選手に対する、MLBからの警告書だよ。わはははは！」

試合時間の短縮に燃えているMLBが、時間をかける選手を
「もっと急げ」とせっついてきたのです。他には
「ブルペンから出てくるのが遅い」など、その指摘は細やかで鋭い。
実際のところ、誰でも流れを自分のペースに持っていくために、
心を落ち着けるために、あえてゆっくり行動したり、間を取ったりするものですし、
その「間」もまた、勝負を分ける大切な行動のひとつと思うのですが、
それも許されないほどに、MLBは急いでいるのです。

そんなに急いでどこに行くんや。

しかし、ファンのことを思えば、時間短縮は確かに大切な使命。
自分のペースと全体の進行の間で板ばさみになりながら、
明日からはちょっとずつ、ペースを上げてみましょうか。

ペンシルベニア州ピッツバーグにて　田口壮　

2008年4月25日

先発して５の１。１本出たからいい、とは到底思えず、なかなか上がってこない打率に
苛立ちが募ります。なんで毎年春先に、こういう状態が続くのでしょうか？
「ソウは春打たないからな〜」と、カージナルスではよくからかわれましたが、
フィリーズではそれを知る人もなく、また、それを言い訳にもできない。
単なる「打てない人」で終わりです。
「春先打たない、けれど、夏場に上がってくる、とわかってもらっている」という甘えを
いかに自分が持ち続けてきたか、いまさらのように反省しています。

新しいチームに来て、自分がどんな選手で、何ができるかを
見せなければ、という気負いがありすぎたのかもしれません。
よく考えたら、いくつもチームを替わっている選手は、こういう状況は
常に当たり前。彼らを見ていると、
「新しいところで自分をアピール」というムードはなく、
「どこにいたって自分は自分」という、マイペースで野球をしているような気がします。

フィリーズは、居心地のいい場所です。
選手とも仲良く楽しくやっています。
だから問題は自分の中にしかなく、それは「なんとか見せなくちゃ」という
焦りに他なりません。
どちらかというと、ドカン、ドカン、と
長打力で勝負するタイプのフィリーズで、スモールベースボールの権化のような僕が
どこまで「自分は自分」と落ち着いていられるのか。

精神力が試される７年目になることでしょう。

ペンシルベニア州ピッツバーグにて　田口壮　

2008年4月24日

厳しい移動が続いています。２日に一回時差を越えるだけでなく、
深夜に飛び、到着が朝方４時、５時、というレッドアイ。
寝不足で目が赤くなることからそう呼ばれるらしいですが、
赤くても試合は必ずあるのです。
今日はミルウオーキーのデーゲーム後、ピッツバーグにやってきました。
やっと東海岸時間に戻って、やっと移動先が明るいうちに着きました。
今までも明るかったですけどね。朝焼けで・・・。

ところで試合前に、トラベルセクレタリーのフランクから呼ばれました。
「おーい、これになんか書かない？」顔が笑っています。
見ると、封筒がぼそっと置いてある。なんかいな？と思っていたら、
「トニー（ラルーサ・カージナルス監督）が、ここ（ミルウオーキー）に
メガネを忘れていったんだって。で、ピッツバーグに持って来てくれと」
そう。フィリーズは、カージナルスの日程を追いかけるように、
ピッツバーグに移動します。着いた頃、カージナルスはまだピッツバーグにいて、
ナイトゲームを行っているのです。

「忘れたらアカン・ソウより」など、いろいろサインペンでいたずら書きをした
封筒は、どうやら無事に球場に届けらたようです。現在ホテルの部屋で、
パイレーツ対カージナルスを見ている僕。
勝敗なんかどうでもよくて、トニーのかけているメガネにばかり目が行って仕方ありません。

ウィスコンシン州ミルウォーキーにて　田口壮　

田口選手宛のファンレターはこちらまで　letter@taguchiso.com