組織を挙げて働きやすい職場づくり

組織を挙げて働きやすい職場づくり
患者に寄り添う看護に重点
医療法人社団昌栄会「相武台病院」(神奈川県座間市)
24時間保育でママさん支援

厳しい労働実態から離職率が12.3%に達するなど、看護師の確保・定着が看護現場の重要な課題になっている。こうした中、神奈川県座間市の医療法人社団昌栄会相武台病院では、組織を挙げて働きやすい職場づくりを進めている。
同病院の特徴は、高齢者医療に重点を置いた地域医療の展開だ。多様なニーズに応える医療を提供するため、看護スタッフの支援に力を入れる。新人、中堅、ベテランの各世代を束ねる看護師歴30年余の西林美枝子総看護師長が、こう呼び掛けている。
「24時間保育などサポート体制を整えており、ママさん看護師も多い。ぜひ一緒に働きましょう」


柔軟な勤務体制を実現
4月23日正午。昼食の時間を迎え、病室などに次々と食事が運ばれていく。
「○○さん、食欲はどうですか」。自分で食事を取ることができない高齢の患者に、中堅の看護師が声を掛ける。様子を確認しながら、看護師がスプーンに載せた食事を口元に持っていく。ゆっくりと味わう。すると、表情が次第に和んでいった。

 同病院には、一般病棟、医療型療養病棟、介護型療養病棟があり、慢性期の高齢患者が多く入院している。高齢者医療に力を入れており、看護師が慌しく駆け回るような急性期の病院とは異なり、ここでは患者に寄り添う看護が中心になっている。
 西林総看護師長は「寝たきりの患者さんが多いだけに、医療機器を駆使する看護よりも、吸引や清拭(せいしき)、褥瘡(じょくそう)などのケアを必要としている。それだけに、ベッドサイドでじっくり患者さんにかかわることを望む看護師に向いている」と話す。

 同病院では現在、常勤と非常勤を合わせて約80人の看護師が働いている。モットーは、仕事と家庭との両立だ。それを実現するためには、看護師が妊娠・出産や子育て、両親の介護などに直面したときでも、離職せずに働ける仕組みが欠かせない。看護職のワーク・ライフ・バランスが重要になっているため、柔軟な勤務体制を整備している。
例えば、当直や夜勤ができないときは日勤のみ、フルタイムで働くことが困難な場合はパート(非常勤)でも受け入れている。


24時間対応の保育完備
 同じ時間帯、同病院の「たんぽぽ保育園」では、5人の幼児が保育士に付き添われて昼食を食べていた。スプーンを手に一生懸命ほお張る子もいれば、急に泣きだす子や保育士に甘える子がいたり、ここでは病棟とは違って、にぎやかな声が広がる。

 同保育所は、第一、第三日曜日を除いて24時間体制の保育を展開。同病院が属する神奈川県の県央医療圏には約20病院あるが、24時間保育を実施しているのは5病院しかない。現在、約20人の看護師が同保育所を利用している。女性の比率が高い看護師が働き続けるための条件として、家事や育児の支援、保育施設の充実などを挙げる声が多い中、同病院ではいち早く保育体制を充実させてママさん看護師をサポートしている。

 自らの経験を振り返り、「(別の院内保育所だったが)出産・育児に直面した時、子どもを預かってもらえたから、看護師を続けることができた」と西林総看護師長。第一、第三日曜日は休園となるが、保育所が休みの場合、利用している看護師も休日となるように配慮している。


教育体制も再編して充実
 仕事と家庭の両立に加えて、同病院では、看護を一生の仕事として進められるように、教育体制の見直しにも取り組んでいる。
そのため、国立病院に約30年勤務し、管理職としても多様な看護師の育成に携わってきた浜川美津江さんを副総看護師長として迎え、これまで病棟ごとに異なっていた教育を一元化して充実するプランを作成している。

 看護師の仕事について、浜川副総看護師長は「看護師の業務の中で医師の指示で仕事をすることがあるが、ただ行うというのではなく、一つひとつの看護業務の意味をきちんと理解し、根拠を持ったケアができる看護師を育てたい」と語る。医療技術の進歩や高齢化の進展によって看護業務の内容も変化しているだけに、これらを見据えた上で「患者さんのニーズに応えられる看護の提供を目指していきたい」と、今後の抱負を述べる。

 同病院が位置する座間市では、この数年で救急を担う病院が5つから3つに減るなどの問題が起きている。高齢者医療に力を入れてきたために、親子二代、三代と続けて同病院に通う住民も少なくない。まちの「かかりつけ医」という存在でもあるだけに、これからも同病院が地域医療に果たす使命は大きい。

 看護スタッフの募集に当たって、麻生明宏事務長が強調する。
 「仕事中は集中して働いてもらえるよう24時間保育でサポートするなど、オンとオフの切り替えがしやすいように配慮している。ブランクがあっても慣れるまで支援するし、構わない。ゆっくり職場復帰してもらえばいいし、働きやすい病院を一緒につくっていこう」

 同病院は、看護学生を対象にした奨学金制度も設けている。同病院のホームページは、http://www.smg-net.com/
 


更新:2008/04/28 11:42     キャリアブレイン

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08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。