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民主、衆院補選で大勝 高齢者医療・道路追い風に

2008年04月28日01時55分

 後期高齢者医療制度や道路政策が問われた衆院山口2区補選が27日投開票され、民主党が大差をつけて自民党から議席を奪い返した。政府・与党は30日に税制改正関連法案を衆院で再可決してガソリン税の暫定税率を復活させるが、民主党は徹底抗戦する構えで、5月の政局も見すえて首相問責決議案の提出時期の調整に入った。

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当選確実となり、バンザイをして喜ぶ平岡秀夫氏(右)。左は佳子夫人=27日午後8時すぎ、山口県岩国市、藤脇正真撮影

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選挙戦を振り返り、敗因を語る山本繁太郎氏=27日午後8時32分、山口県岩国市、金子淳撮影

 山口2区補選は、比例中国ブロックからくら替えした民主党前職の平岡秀夫氏(54)=社民党推薦=が、自民党新顔で前内閣官房地域活性化統合事務局長の山本繁太郎氏(59)=公明党推薦=を約2万票差で破った。当日有権者数は30万8017人、投票率は69.00%(前回総選挙72.45%)。

 補選は、05年の総選挙で平岡氏に競り勝った自民党の福田良彦氏が2月の出直し岩国市長選に転出したことに伴う。共産党は同県内では53年ぶりに国政選挙での候補者擁立を見送り、自民・民主の一騎打ちとなった。

 平岡氏は今年初めに早々と名乗りを上げ、選挙戦では「政権交代に向けた大きなうねりをつくる」と強調。道路政策、消えた年金記録、後期高齢者医療制度の「3点セット」で政府・与党を攻撃した。告示の15日に年金からの保険料天引きが始まった新医療制度は平岡氏にとって追い風に。政府・与党が投開票日直前に暫定税率復活の方針を決めたことも有権者の反発を買ったと見られる。

 民主、社民支持層をまとめ上げたほか、無党派層にも浸透。自主投票で臨んだ共産支持層も引き寄せた。選挙区での返り咲きを果たした。

 民主党は「総選挙の最大の試金石」(小沢代表)として、小沢氏、菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長の「トロイカ」をそろい踏みさせるなど総力戦を展開。最大の支持組織「連合」も傘下労組を固めた。社民、国民新、新党日本の首脳も応援に入り、野党共闘をアピールした。

 一方、山本氏の立候補表明は3月初めと出遅れた。争点となった道路政策には触れず、ひたすら「地域活性化」を強調。米軍岩国基地への民間機就航の実現を唱え、平岡氏を急追したが、及ばなかった。

 福田内閣の支持率低下に悩む自民党は「政局の流れを大きく変える選挙」(古賀誠選対委員長)と位置づけ、こちらも総力戦に。首相や伊吹文明幹事長、麻生太郎前幹事長、安倍前首相らも応援に入り、地元首長の協力を仰ぎ、建設業をはじめとする企業・団体を引き締める組織戦を徹底した。しかし、自民、公明支持層さえ十分固めることができず、無党派層への広がりも欠いた。

     ◇

 平岡氏の当選に伴う衆院の勢力は次の通り。

 自民党304▽民主党・無所属クラブ114▽公明党31▽共産党9▽社民党・市民連合7▽国民新党・そうぞう・無所属の会6▽無所属9

■福田首相に打撃 民主攻勢へ

 就任後初の国政選挙で敗れた福田首相(自民党総裁)の打撃は大きい。求心力の低下は避けられず、政権運営はさらに厳しくなる。政府・与党は、総選挙をいつやるのか、「選挙の顔」を誰にするのか、といった政局シナリオの見直しを迫られそうだ。

 補選の敗因は「後期高齢者医療制度しか考えられない」(参院自民党幹部)との見方が強まっている。補選告示の15日から保険料の天引きが始まり、有権者に不信感が広がった。自民党内では「大きな方向性をいじるのは不可能」(谷垣禎一政調会長)との指摘がある一方、「制度を見直さなければ今後の選挙は戦えない」(自民党三役経験者)という声も出ている。野党は制度廃止を求めて攻勢を強める考えだ。

 政府・与党は補選の結果にかかわらず、税制改正関連法案について「30日衆院再議決の方針に変わりはない」(大島理森国対委員長)との姿勢で、道路整備財源特例法改正案も5月12日に再議決する構えだ。ただ、中堅・若手議員からは「特例法改正案の再議決は首相方針と矛盾する」という批判が再燃しかねない。

 首相は27日、町村官房長官と会談し、5月12日以降に、09年度からの道路特定財源の一般財源化方針を「閣議決定」に格上げすることを確認。28日に公明党の太田代表と会談、30日には再議決後に記者会見して、一般財源化の具体策を国民に訴える。

 首相は6月にまとめる「骨太の方針08」にも一般財源化を盛り込む考えだが、自民党内では「必要な道路は造り続ける」との声が消えない。求心力の陰りに乗じて道路族が巻き返す可能性もある。

 大型連休明けの日中首脳会談、7月の北海道洞爺湖サミットといった一連の首脳外交や、その後の内閣改造などで求心力をどこまで回復できるかが、今後の焦点となる。

 一方、民主党は補選勝利を「民意の表れ」として対決姿勢を強めている。鳩山由紀夫幹事長は27日夜、記者会見で「一日も早く解散・総選挙を行って、国民に信を問うてもらいたい。それができなければ辞めるべきだ」と求めた。

 与党による30日の衆院再議決を阻止するため、28日には首相問責決議案をいつ提出するか最終調整に入る。民主党の山岡賢次国対委員長は27日夜、5月12日の道路整備財源特例法改正案の衆院再議決も問責決議案提出の対象になりうるという見方を示した。問責決議案を5月まで温存し、ガソリン税収を10年間道路整備にあてるとする特例法改正案と、「09年度から一般財源化」とした政府・与党決定との矛盾を突く狙いがある。

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