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「仕事と育児の両立阻む日本経済の病巣とは」 リチャード・カッツ(1) - 07/04/10 | 07:00


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 働く女性を増やすと同時に出生率を高める――。この一見不可能と思える政策を、日本は本当に実現できるのだろうか。

 安倍内閣は、可能だと主張している。いや、消費税を据え置きか、若干の引き上げだけで2011年までに財政のプライマリーバランスを達成するには、この目標の達成が不可欠なのである。

 05〜15年の間に15歳から64歳の労働力人口は毎年9%ずつ減っていくと予想されている。労働力の減少を補うために、もっと多くの女性と高齢者が労働力として加わる必要がある。労働力が増えないと、経済成長も税収増も期待できない。04年度の社会保障計画は高い出生率が前提となっている。出生率を高くしないと、増加する年金受給者を支えるだけの労働者が不足するからだ。

 もっとも、04年度の計画は、先日発表された人口動態予想によって早々と役に立たないものになってしまった。この計画は、特殊出生率は05年に1・31で底を打ち、20年までに1・39にまで回復するという前提に基づいて策定された。しかし、新たな調査では、05年の特殊出生率は1・26と低下、さらに20年までに1・22まで低下すると予想されている。年金制度を維持するためには、遠からず年金の給付削減、あるいは保険料と税金の引き上げを行わなければなくなるだろう。

 問題は、現在のような状況の下で、はたしていま以上に多くの女性が仕事に就き、さらに多くの子供を産むようになるかである。ただし、その両方を同時に実現することは不可能だ。

 以前よりも労働参加率が高くなっている年齢層は、25〜34歳である。1980年にはこの世代の女性の49%が職に就いていたが、現在は68%に上昇した。しかし、その反面、女性の結婚年齢が遅くなり、出産する子供の数も減ってしまった。世論調査では大半の女性が育児と仕事の両立を望んでいるのに、3歳以下の子供を持っている女性の80%は専業主婦になっている。

 育児が一段落した後で、女性が仕事を再開したいと思っても、給与水準が低い職かパートの仕事くらいしかない。それ以前の問題として、そもそも労働条件が女性にとって魅力的とはいえない。日本の男性と女性の賃金格差は先進国の中で最大である。

 86年に国会は雇用における性差別を違法とした。だが、企業は法律の抜け穴を発見したため、成果は必ずしも上がっていない。つまり、正規雇用の男女の賃金格差は縮小に向かっているものの、多くの企業では女性の正規雇用に消極的なのだ。女性の40%は正規の従業員よりも安い賃金で、週34時間未満しか働いていないのが実情だ。
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