このように、年5番というプロの能楽師がのけぞるペースで能のシテ舞台に立ち続ける僕ですが、大学を卒業してから能を出すまで、10年以上のブランクがありました。
ブランクと言っても、全く離れていたわけではありません。絶えず気持ちを向けていました。だから神様が「今だ、やりなさい」って仰ったときも、すぐにその世界に入れたのです。僕にとっては、お茶や華道やオペラ、絵も書も会社経営も、すべてがご神業ですから、チャンネルがすっと合うと、こんなすごいペースで能を出し続けることになるのです。僕は神様が「やりなさい」と仰ったら、「はいっ」と素直に始める。どんなに忙しい中でも、気持ちだけは向けていくのです。持続こそがご神業ですからね。そうして必死に頑張った分、全てが己の宝となるのです。
こういうこともありました。僕は俳句をやっていますが、ある時、一回休んだら、俳句の先生から手紙が来ました。筆と墨の直筆の手紙で、「一回でも、俳句を提出しないとは、許せません。」という強烈で面白い手紙でした。僕は笑いながら読み、神の声として感謝しました。それ以来、6年間月に1回の句会は1度も休んだことがありません。

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