漸く、昨日より国会が動き出しました。
昨日は日銀同意人事に関する採決が行われ、本日から予算委員会が再開されました。
日銀同意人事に関しては、最も議論の矢面となった武藤総裁の採決を、私は「棄権」させて頂きました。どう考えても、今、この時点で「否決票」を投ずる事がバランスの取れた判断とは思えなかったからです。
言うまでも無く、内外の経済状態は異常な状態であり、かつ様々な観点より緊急性を持った対応が必要だろうと思われます。そんな中で、誰もが納得出来る総裁の引受け手を探し出す事は、大変難しい事だと思われますが、今の環境を考えた場合、「総裁空席」というリスクをとる事もまた避ける必要があると考えられます。ならば、明確に「この人物では絶対に駄目だ」という根拠が無ければ、如何に与野党対決の昨今といえども、否決するという事は簡単に考えて良い問題ではありません。反面、民主党会派の分裂を来たして良いという話でもなく、葛藤の中、やむにやまれず総裁人事についてのみ、「棄権」という選択肢を取らせて頂きました。
自分は無所属という立場であり、民主党会派に入る前提条件として、「首班指名」・「予算案」以外の採決行動以外は、個々の対応が一定限度において許されている立場ではあります。所謂、「党議拘束」の範疇外の人間です。しかし結果的に会派内の様々な方や支持者の皆様に御心配をお掛けしました事を、この場をお借りして、まずお詫び申し上げます。
同様に、予算委員会が再開されたとはいえ、予算案および予算関連法案の審議の目処は全く立っていない状況です。予算関連法案の主戦場の財政金融委員会に至っては、立ち上がる目処さえ立っていません。本来であれば、予算と一体であるはずの予算関連法案が審議出来ない状況は、やはり異常な状態であり、両院議長斡旋の目安となる3月31日に向けた見通しも「極めて不良」と言わざるを得ません。勿論、予算関連方案には、議論の中心となった「道路特定財源」の問題のみならず、多数の期限切れ税制措置もあり、例えば「土地売買による所有権の移転登記等の税率の軽減措置」、「ナフサ・農林漁業用のA重油等の免税措置」、「中小企業者等の小額減価償却資産の取得価値の損金算入の特例措置」など自動車以外でも広く国民生活に密着した特別措置がありますので、いかに「道路財源改革」が政争の焦点といえども、無関係な分野まで巻き込んで混乱を起こして良いという話にはならないと思います。心から、残された3週間の間の与野党の理性的な対応を望みたいと思います。
さて、本日は午前は予算委員会に出席後、午後は国立感染症研究所に視察に行かせて頂きました。我が国の感染症研究の本丸であり、世界の中でも十分な存在感を持った誇るべき施設だと認識しています。勿論、テーマは「新型インフルエンザ対策」です。
感染研の宮村所長、感染症情報センター長の岡部先生、ウイルス第三部長の田代先生、感染病理部第二室長の長谷川先生など、国内を代表する専門家の忌憚の無い意見を伺う事が出来、また良いディスカッションが出来たと思います。
要約すると
・パンデミックが実際に起こった場合のインパクトは計測困難であるという事。厚労省の「感染者2500万人、死者64万人」もまた十分な根拠があるといえず、危機管理上は「最悪以上の最悪のケース」を想定する必要があるという事
・社会的に、個人・地域・企業等、まだまだ啓蒙活動が必要だという事
・タミフルは通常のインフルエンザの「倍量・倍期間投与」を前提に備蓄する必要があるという事(今の備蓄計画の4倍必要)
・プレパンデミックワクチンの有効性・安全性は不確実な部分は確かにあるものの、十分に期待出来る状況にあるという事。また経験的に副作用が大きいとされる「全粒子型ワクチン」ではあるものの、今までの知見からは重大な有害事象は認められていないという事。
・スイスでは全国民を対象として希望者にプレパンデミックワクチン摂取を始めているという事(詳細は不明ながら、旅行者にも摂取可能という事です)
・富山化学工業が現在、日米で臨床試験中である「T-705」は、『H5N1』に対しても相当有望な抗ウイルス薬であるという事。但し、今までの抗ウイルス薬とは全く異なるメカニズムである為、「生殖毒性」などの有害事象には留意する必要があるという事。勿論、今までの治験過程では重大な有害事象の報告はありません。
・感染研で開発されている軽鼻投与可能な「新型ワクチン」(昨日の朝日新聞一面を御参照下さい)も作用機序より相当に有望なワクチンである。しかし、動物実験レベルの話であり、今後の臨床試験期間を考えると通常では、まだ4〜5年程度開発に必要である為、様々な政策的支援が必要であるという事
・・・等々です。
所感としては、もう数年の準備期間があれば、相当の準備が可能だと思われますが、しかしパンデミックは「何時発生するか不明」です。今出来る事は今行って、将来への新薬開発とワクチン・薬剤備蓄も大幅に増強しなければならないという事でしょう。
幸い、視察に参加した会派内のプロジェクトチームメンバー約20名は、疾患の恐ろしさと適切な対応を行う事の重要性を十分に理解していると思います。
不毛な政争ばかり継続される国会情勢ですが、しかし「人の生命を守る」、当たり前の政策を与野党一致して行う、当たり前の状況に一早く復旧するよう、自分もある意味において「政治生命を賭して」取り組んでゆきたいと思います。
2008年03月13日
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私達としても、このような活動は本当に喜ばしいことです。
プレパンデミックワクチンが期待できるワクチンであること。
タミフルをもっと備蓄すること。
ニュースなどで拝見すると「本当にパンデミックに対する危機感があるのか?」と怒りを覚える毎日だったのですが、
少人数だとしても、このように真剣に考えてくださる方がいるということは心強いです。
私達一般市民にも、プレワクチンが受けられるようになれば、大切な小さい娘の命が守れる。
そうなるだけでも私は涙が出る思いです。
ぜひ一日も早く、国民が安心できるようにしてくれますよう心から祈っています。
取り組みに感謝いたします。
しかし、未だ新型インフルエンザに
対しての備えは未熟な日本ですが、
大多数の国民が全く関心を持っていない
ことに一番苛立ちを感じます。
国民をパニックに陥れることなく
今のうちからしっかり知識を植えつける
手段も考えなければならないと思います。
森田先生はパンデミックに備えて食料等の備蓄は進められていますか?公務員の方も各自で2か月分の備蓄は進めてもらいたいです。新型インフルエンザではなく飢餓で国内が混乱するのは見たくありません。市町村レベルで行動対策計画を作っているところはほとんどないと思います。私も自治体に何度もメールを出していますが全く動きがありません。上から号令をかけてほしいです。
与野党の攻防は不毛としか移らない事が多いですが、今回の騒動も危機管理を欲している私にとっては、投票意欲を削ぐ事にしかならない出来事になってきています。先生が現場で苦しまれる御苦労いかばかりかと思いますが、国民としては話がわかる政治家の方がいると思うだけでも救いになります。是非与野党が危機に対峙して行くよう誘導をお願い致します。
また感染研の知見の記載ありがとうございます。現場に近い人間としては、中央に近い所で危機管理に向けて努力されている事が分かるのも救いです。感染研も個々の方は公務員でしょうから、無責任に発信する訳にはいかないのでしょうが、もっと政府に対し面と向かって世論を喚起する役割を担っていただきたいと思っています。
政治家の方が先生のように感染研や、在野の有志の方々の意見を代弁して世論を形成していっていただければと思います。
厚生労働省の早期対応戦略ガイドラインでは、
薬剤以外の感染拡大防止策とて、
移動制限・学校の臨時休業・職場対策・
集会や社会活動の自粛をあげています。
この中で学校の臨時休業が、
もっとも確実に実行できる対策です。
ガイドラインでは以下のように書かれて
います。(P98)
>症例が発生した市町村内の学校は、
>必要性に応じて臨時休業する。
>ただし、感染拡大が広域化した場合には、
>県内の全ての学校を対象とすることも検討する。
>実施期間が遷延したり、地域的・全国的に
>感染が拡大する可能性もあることから、
>学校の臨時休業の期間が数か月となることも想定される。
>文部科学省、教育委員会及び学校は、
>そのような場合の適切な教育の提供に関して事前に検討する。
しかし、学校の閉鎖について各都道府県の対策を調べたところ、
ほとんどが、フェーズ4や5の段階は、校内で患者が発生か、
せいぜい校区内で患者が発生して、休校となるようです。
唯一、鹿児島県のみが、市町村単位で患者が発生した時点で、
当該市町村の全校を休校とするとなっています。
「鹿児島県学校等における新型インフルエンザガイドライン」(P16)
http://www.pref.kagoshima.jp/__filemst__/21845/11gakkou.pdf
市内に患者が発生しているにも関わらず、
学校の臨時休業を行わない自治体が、
その他の早期封じ込め対策をとれるはずがありません。
なぜ自治体は、厚生労働省の指針を無視するのでしょうか。
なぜ国は、自治体を指導しないのでしょうか。
パンデミックになってから休校するのでなく、
パンデミックを防ぐため、せめて時間を遅らせるために、
休校すべきです。
各都道府県で鹿児島県のような学校に関するガイドラインを
作成するよう、ご尽力いただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
「小学校教員」さんのおっしゃる学校閉鎖問題は勿論のこと、他にも自治体の積極的な取り組みが必要であろう問題があります。
一つは、廃棄物の処理。パンデミック発生時、感染性廃棄物の処理は勿論のこと、通常の一般廃棄物の収集・焼却も大きな課題となります。救急に携わる方の装備は備蓄されている先進的な自治体でも、収集作業員の装備は丸腰のまま。そのままだと収集作業は滞ります。そうなると、新型インフルエンザもさることながら、そこから別の伝染病が発生する可能性も出てきます。
次に、死体の処理。特に自宅で亡くなられた方についてです。軽症者には自宅での療養を命じるとのことですが、中にはそのまま亡くなる方も出るでしょう。病院での遺体の処理にてんてこまいになっている中、その遺体は誰か引き取りに来てくれるのでしょうか?放っておけば家庭内感染は勿論のこと、廃棄物と同じく他の伝染病の問題も出てきます。
これらの点についても、自治体への指導を強化していただけませんでしょうか。
よろしくおねがいいたします。
ワクチン、抗インフルエンザ等、いろんな対策の話を耳にしますが、同時にその対策がいつ実現し、またその対策により期待される効果がどの程度なのか、それでも不足していることが何なのかがいまひとつわかりにくい点がございます。
是非、国には新型インフルエンザ対策のビジョンをわかりやすい形で、この1年ではここまで、3年でここまで、そして将来的(といっても5年程度でしょうか)にはこのような仕組みを整えるといった形で提示いただきその中で、政府・自治体が備える点、企業が備える点、そして国民自身が備えなければならない点を明らかにし、それぞれの対策を呼びかけていただくことを希望しております。
現在の政局等、問題に取り組むには困難な状況が多いかと思いますが、よろしくお願いいたします。