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『まちの病院がなくなる!?地域医療の崩壊と再生』を読んで

石倉茂2008/04/27
長年にわたり自治体病院のマネジメントに関わりを持ち、夕張市病院経営アドバイザリーも務めていた筆者が、自治体病院を通じて、日本の医療制度とその問題を記した本書は、病院経営や日本の医療に興味がある方はもちろん、日本という国で生きていく方にとって、一読の価値があると思います。
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『まちの病院がなくなる!?地域医療の崩壊と再生』を読んで | 著者:伊関友伸<br>
出版社:時事通信社<br>
定価:1900円+税
著者:伊関友伸
出版社:時事通信社
定価:1900円+税
 本書は自治体病院を通じて、日本の医療制度とその問題を記した作品です。著者の伊関友伸さんは長年にわたり自治体病院のマネジメントに関わりを持ち、夕張市病院経営アドバイザリーも務めていた方です。ですから、本書を通じて現場の声を聴くことができるので、病院経営や日本の医療に興味がある方はもちろん、日本という国で生きていく方はぜひ一度本書を読んでみて下さい。伊関さんの考えに同意できる部分も、反論したくなる部分もあるはずです。まずは日本の医療について考える為のきっかけになる本を読んでみることが大事だと思います。

 伊関さんの自治体病院に対する考えを簡単に纏めると以下のようになります。

1.医師の待遇を改善すべし。
2.患者・市民は病院に対する考え方を改めるべし。
3.病院はBS、PL、CFを重視した経営を実践する(専門用語は自分で調べて下さい)。
その他様々なことが書かれてますが、大雑把に言えば、上の3つが要点だと思います。以下で伊関さんの考えを掘り下げてみます。

「人材と変革の視点」
・医師の確保が目標。
・成功への鍵は、医師の待遇改善(給料アップ、労働時間短縮、責任軽減、知的かつ技術的な成長が可能な環境整備、指導医の常駐)
・評価指標はスタッフ充足率。
・現状以上が数値目標となる。
・今後の実行計画は国への診療報酬増額要求。

「業務プロセスの視点」
・業務継続と病院倒産回避が目標。。
・成功への鍵は、医師の確保と財務の健全化。
・評価指標は医業収支比率と各診療科の医師数
・数値目標は医業収支比率100以上と今以上の医師数
・今後の実行計画は医療と経営に精通した人材の育成、自治体からの権限委譲。病院、診療所の役割明確化。

「患者・市民の視点」
・24時間365日全市民が医療サービスを低価で受けることが目標。
・成功への鍵は、病院存続。
・評価指標は自治体内の病院数及び各診療科数及び常勤医数。
・数値目標は現状以上。
・今後の実行計画は医師と患者・市民の相互理解を促す為の措置。

「財務の視点」
・各病院単位での利益性、売上げアップ、低コストが目標。
・成功への鍵は病院建設費や医療資材購入費の低減、患者増加、診療報酬の点数に応じた経営戦略の立案実行。
・評価指標はBS、PL、CF。
・数値目標は現状以上。
・今後の実行計画は、「何をして、何をしないか」に沿ったコスト意識ある投資。医療と福祉の上手な使い分け。

 少し雑になりましたが、何となく伊関さんの考えが伝わったかと思います。

 私が一つ気になったのは、伊関さんが何度も診療報酬を兆円単位で引き上げるべし、と主張されている点です。みなさんもご存知通り、日本は国も地方も借金体質で財政は火の車です。私は個人的に診療報酬の引き上げは難しいと思います。診療報酬は公的資金です。例え医療であれ、公的資金に依存したままでは、何も変わりません。そろそろ医療とビジネスを真剣に考えても良い時期ではないでしょうか?病院は営利集団ではありません。しかし、現実に30兆円という医療マーケットが日本国内に存在しているのです。この30兆円マーケットを、民間主導で健全に成長させることが日本の国益ではないでしょうか?

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