硫化水素(H2S)は無色で、腐った卵のようなにおいのするガス。硫黄泉などの温泉からも発生する。毒性は強く、800ppm以上の濃度のガスを吸入すると即死する。内藤裕史・筑波大名誉教授は「他の有毒ガスに比べ影響が出るのが非常に早い。においを感じたら、現場に近づいてはいけない」と警告する。
硫化水素は、脳が酸素を利用するために必要な酵素の働きを阻害し、酸欠と同様の状態に陥り死に至る。硫化水素のにおいは刺激が少ないため我慢しやすく、脱出などが遅れがち。100ppmを超える濃度で30分を過ごすと、自力で脱出できない状況になる。硫黄泉に入浴中、周囲の人が気づかぬまま中毒を起こして死亡する例もあるという。
内藤名誉教授は「硫化水素の使用は周囲に迷惑をかける恐れが高い。空気より重く、発生階の下の人も巻き添えになる。床にたまったガスにも注意が必要だ。救助に行った人の2次、3次被害も多いので、発生源には絶対に近づかないという原則を周知すべきだ」と呼び掛ける。
硫化水素による自殺で市販の医薬品や洗剤が使用されていることを受け、厚生労働省は25日、日本薬剤師会など薬局・薬店の業界4団体に対し、注意を促す文書を通知した。客に購入目的を尋ねたり、硫化水素を発生させる医薬品や洗剤をセットで購入していないかなど注意するよう依頼する内容という。ただ、同省は「毒物や劇物でない限り、客の身元確認を求めることまではできない」としている。
2008年4月26日