大阪府の橋下徹知事が進める財政再建策の影響で、府のがん対策の基本となる「府がん対策推進計画」の策定が、素案の状態で1月から宙に浮いていることが分かった。府民の意見を聞く段階に進む予定だったが、新規事業の見送りと既存事業の見直し方針が打ち出され、公開しても予算の裏付けのない“絵に描いた餅”になってしまうためだ。厚生労働省が定めた期限は既に過ぎ、府内のがん患者は「がん対策が遅れる」と危機感を強めている。
同計画は、昨年施行されたがん対策基本法で全都道府県に策定が義務づけられ、厚労省は期限を「07年度内が望まれる」とした。地域の特性に応じた取り組みを定め、質の高いがん医療の提供を目標としている。
府によると、計画を検討するため、昨年7月に第1回の協議会を開催し、今年1月の第4回会合で素案を提示。2~3月に公開して広く意見を求め、3月中に計画を策定する予定だった。
素案は、予防の推進、早期発見、医療の充実を3本柱に掲げ、それぞれの取り組みを明記した。新年度予算に新規の「がん医療充実強化事業」など計3150万円を計上する予定だったが、橋下知事が当選し、7月までは暫定予算で同事業は認められなくなった。
さらに、予防と早期発見で重要な役割を担う「大阪がん予防検診センター」や既存の事業の多くが、改革プロジェクトチームによる財政再建プログラム試案(PT案)で廃止や縮減の対象になった。新規事業も2年間の見送りが示された。府は夏ごろに策定するとしているが、担当者は「予算措置がない場合、素案の見直しが必要になる。事業の必要性を訴え、予算が認められるよう努力している」と話す。
協議会のメンバーの1人は「3人に1人ががんで死亡する時代。大阪ががんに対して無策にならないように、1日も早く計画を策定してもらいたい」と訴えている。
国立がんセンターなどによると、全国で計画が策定できていないのは大阪、青森、新潟、三重、滋賀、奈良、岡山の7府県。滋賀は10月ごろ、奈良は今年度中、岡山は9月をめどに作業を進めている。
【根本毅、渋江千春】
毎日新聞 2008年4月27日 2時30分