水俣病未認定患者の救済問題で、原因企業チッソの後藤舜吉会長が24日、鴨下一郎環境相と会談し、与党プロジェクトチーム(PT)がまとめた新救済案の受け入れ拒否を改めて伝えた。PT案実現に向けた進展を期待していた患者団体からは「チッソは言いたい放題だし、がっかり」と怒りや落胆の声が上がる一方、訴訟派の患者団体は「PT案では全面解決にならないことがはっきりした」と冷静に受けとめた。
主要患者4団体のうち、PT案受け入れを表明している「水俣病被害者芦北の会」(津奈木町)の村上喜治会長(58)は「チッソは今も亡くなっていく人たちに何と言うつもりか。企業の都合しか言わないで世の中通るのか」と怒った。
同じく受け入れを決めている「水俣病出水の会」(鹿児島県出水市)の尾上利夫会長(70)は「会員に説明がつかない。国もPTもこんなに力がないのか」と落胆していた。
一方、国や県、チッソを相手取り損害賠償請求訴訟を起こしている「水俣病被害者互助会」(水俣市)の谷洋一事務局長(59)は「中途半端な解決ではだめということが明確になった。訴訟で決着をつけるしかない」。同じく提訴している「水俣病不知火患者会」(同市)の瀧本忠事務局長(47)も「チッソが受け入れても訴訟は続く。司法解決が正しいことが証明された」と述べた。
県庁では水俣病保健課の職員らが情報収集に追われた。職員からは「今の救済案が難しくなったことは間違いない」との声も。
蒲島郁夫知事は「合意に達しなかったようにうかがっているが、チッソが原因企業の責任を果たすよう、強く期待していることに変わりはない。今後とも関係者が役割を果たしながら、救済策の早期実現に努めていきたい」とコメントした。【西貴晴、門田陽介】
毎日新聞 2008年4月25日 地方版