ここから本文エリア 「こんな働かせ方、おかしいですから」涙の全面勝訴2008年04月26日 自らのケースを内部告発し、違法な「偽装請負」の解消に取り組んできた吉岡力(つとむ)さん(33)が25日の大阪高裁判決で全面勝訴した。多くの若い人たちが同じような境遇に苦しむ状況が、これで変わるのでは――。吉岡さんは「うれしい」と語り、涙をみせた。
◇ 裁判長が「雇用契約上の権利を有することを確認する」と述べると、法廷の吉岡さんは2度、小さくうなずいた。判決理由の要旨の読み上げに移ると、口を固く閉じたまま下くちびるを前に押し出し、泣きそうな顔になった。 「こんな働かせ方、おかしいですから」。判決後、吉岡さんは目に涙を浮かべて偽装請負を批判した。「この問題に苦しんでいるのは、特に、ぼくらより下の世代で、これからの日本の社会を支える人たち。そういう人たちを痛めつけて、日本の将来があるとは思えない。人をモノみたいに扱う働かせ方は今後一切やめてほしい」 04年1月、吉岡さんは松下PDPの工場で働き始めた。違法な偽装請負と気づいたのは翌05年4月。是正指導を求めて大阪労働局に内部告発し、その結果、8月に直接雇用された。ところが、5カ月ほど後の06年1月に「契約期間満了」を理由に雇用を打ち切られた。 吉岡さんは大阪地裁に提訴。07年4月の一審判決は「労働者派遣法の規定にもとづき直接雇用義務が生じる」と述べたものの、雇用継続は認めなかった。 一審判決の2カ月後、吉岡さんは、キヤノンの偽装請負について衆院予算委員会で語った大野秀之さん(33)らとともに「偽装請負を内部告発する非正規ネット」を旗揚げした。07年7月、国会議員らに同行してもらい、厚生労働省の高橋満・職業安定局長(当時)に面会した。 高橋局長は「企業活動を支えるのは労働者であるわけで、企業も責任を感じてきているんだろうと思っている」と述べた。そこで吉岡さんは、地裁判決が厚労省より踏み込んだ見解を示したことに言及した。 吉岡さんらは、労働者派遣法の定める1年の期限を超えて使われてきたのだから、定年まで勤められる正社員化が行われなければならないと考える。しかし、局長はそうではなかった。「できるだけ長期の雇用が望ましいが、(厚労省に)それを強制する権限はない」 吉岡さんは社内でただ一人の「期間工」として5カ月、無意味としか思えない作業を強いられた末、愛着のある職場から追い出された。それを是正させることは不可能という見解だった。 07年10月、吉岡さんらは厚労省の岸宏一(こういち)副大臣にも面会。「雇用の安定を図るという法の趣旨に、期間限定の雇用は反している。行政として、ちゃんとした対応をしてほしい」と訴えた。 25日の大阪高裁判決は事実上、吉岡さんを無期限で雇うよう命じており、これまでの厚労省の見解とは異なる。記者会見した吉岡さんは「社会正義を貫いた判決が司法で出た。行政は不法行為に厳格な対応をしてほしい」と語った。(奥山俊宏) PR情報この記事の関連情報関西ニュース
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