◎兼六園の欧米客急増 「三つ星」効果で石川売り込め
北陸信越運輸局がまとめた昨年の外国人来訪結果で、金沢市の兼六園を訪れた欧米人が
急増したことは、権威あるミシュランの格付けで最上位の「三つ星」に輝いたことも大きな要因と言える。
ユーロ高により、全国的に欧州客は増えているが、兼六園の昨年の入場者の伸び率を見
ると、ドイツが前年より約50%(全国で15%)、フランスが約40%(同26%)、米国が約30%(同0・2%)増え、いずれも国別の伸び率の全国平均を大きく上回る結果となった。これは、ミシュランの格付けの価値を知る欧米客が、三つ星の名園として兼六園に注目していることを示す数字とも言えよう。
政府のビジット・ジャパン・キャンペーンも奏功し、日本を訪れる外国人の数は、一昨
年が七百三十三万人、昨年が八百三十四万人と増え続け、今年は九百十五万人が見込まれる。国内の観光人口が頭打ちの中で、外国人観光客の呼び込みは、地域へ多大な経済効果をもたらすだろう。
石川県でも、兼六園を呼び水に、引き続き好調な台湾、韓国に加え、オーストラリアを
含めた欧米富裕層への三つ星発信に一層力を入れ、城下町金沢をはじめとする奥深い魅力を伝えていきたい。
ミシュランの「日本版観光地ガイド」は、九百カ所以上の観光地や名所を格付けし、世
界各国で出版された。兼六園は法隆寺や姫路城など五十一カ所とともに三つ星に輝き「必ず見るべきところ」と位置づけられた。三つ星になると、来訪者が急増すると言われるが、兼六園の欧米客アップにも効果のほどがうかがえる。
今年度、石川県がニューヨークのレストランの超一流シェフを招いて石川の食文化を発
信し、金沢市は、昨年末に仏カンヌで開かれた富裕層向け旅行商談会で金沢に興味を示した海外旅行会社に、支援措置も検討している。
このように石川の発信に当たって、欧米シフトを加速する動きも出てきただけに、三つ
星効果を生かし、観光地だけでなく、食や美術工芸なども含めた総合力で、欧米の旅の玄人筋に石川の土地の底力をアピールしていきたい。
◎長野聖火リレー 後味の悪さだけが残った
怒号が飛び交うなか、「騒動の火」が新緑の信濃路を慌ただしく駆け抜け、風のように
去った。多少の混乱は覚悟しても、深刻な事態だけは起こさずに終わってほしいという願いは、曲がりなりにも達成できたのではないか。やっかいな仕事をやり遂げた大会関係者や警備陣は、胸をなで下ろしていることだろう。
それにしても、三千人を超える警備陣が厳戒態勢を敷き、大挙動員された中国人留学生
らとチベット支持者がにらみ合ったプレ・イベントに、どんな意味があったのかと思うと、苦いものがこみ上げてくる。沿道を埋めて手を振るはずの市民は騒動を恐れて聖火を遠巻きにし、わずかな応援の声は中国人とチベット支持者の怒声にかき消された。警備の分厚い人の壁に守られて、聖火を運んだスポーツ選手や芸能人たちの冴えぬ顔が、「平和の火」のむなしさ、徒労感を象徴していた。
平和の祭典をことほぐ聖火リレーを泥にまみれさせてしまったのは、ほかならぬ中国自
身の責任である。チベット自治区のラサで起きた大規模な暴動を武力鎮圧し、海外メディアを排除して報道管制を敷いた。中国は国際社会の抗議の声に耳を貸そうとせず、かたくなで高圧的な姿勢を取り続けているように見える。
それまでも中国はスーダンに武器を輸出し、ダルフール紛争を泥沼化させたことで、欧
米社会の批判を浴びていた。長らく中国の人権抑圧を批判してきた国際社会が、チベット問題を機にためこんでいた不満を一気に爆発させた格好である。
中国がギリシャから北京へと運ぶ聖火をわざわざ遠回りさせ、五大陸を運ぶ壮大なセレ
モニーに仕立てたのは国威発揚のためだったのだろうが、その政治的な思惑を逆手に取られ、格好の抗議の舞台にされてしまった。
聖火は間もなく中国本土に渡る。海外の聖火リレーで見られた抗議行動は影を潜め、各
地で大歓迎を受けるだろう。なぜ国際社会がしつように抗議したのか、中国人民が明確に理解したとき、彼らの意識は変わるのだろうか。