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2008年4月27日

 強い不快感を残して、長野の聖火リレーが終わった。リレーに対する妨害には腹が立ったが、赤い国旗を掲げた沿道の在留中国人たちの熱狂にも驚いた

やむにやまれぬ思いで来た人もいただろうが、その筋のお達しによる動員組もいた、と見る方が自然だろう。観光気分で来た連中や、断り切れずに渋々加わった若者も交じっていたかもしれない。それが、リーダーの号令で愛国の叫びを上げた。群集心理である

報道が規制される本国に比べ、チベット問題を知る機会の多い彼らである。が、それを「偏向報道」と言い募る人たちでもある。もっとも、どこの国にも「声なき声」はある。聖火を巡る熱狂を、冷ややかに見守った人たちがいても不思議ではない。熱狂は目立つし、声なき声は聞くのに骨が折れるだけである

聖火が走った道に近い善光寺では、チベット騒乱の犠牲者を悼む法要が営まれた。赤い旗をたたんだ後に、何人の中国人がこの祈りの場に出向いたのだろう

知りたかった情報は、聖火騒動にかき消されて届かない。そんな愛国者がいたのなら、喜んで隣人として握手を交わしたい。


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