車の運転は「後方確認」に難があり、トランクの傷は絶えない。しかし、制限速度の順守は心掛けており、免許更新時には優良ドライバーの“称号”をいただいている。
それが、今年に入り、交通上のトラブルに巻き込まれ、少々落ち込んでいる。先日も車線変更をしただけで、後続の若者がクラクションを鳴らして追跡してきた。信号待ちの交差点では自分の車のガラスを殴りつけながら威嚇している。「暴力を振るわれたら一一〇番」と、思わず携帯電話に手を掛けた。
正月には、見通しの悪い道路で、ある車の後ろにつけていたら「さっさと、先に行けー」と運転席からすごい形相で若者が降りてきた。こちらは車列の最後尾と勘違いしたのだが、せめて駐車灯をつけてほしい。
いずれのケースも、体験しないと分からない恐怖感があった。犯罪はいつ、身近に降り掛かってくるか分からない。JR岡山駅ホームの突き落とし事件など、理不尽な出来事には言葉を失ってしまう。
事件取材を担当していて、「キレた」末の衝動的犯行はよくあったが、最近は「誰でもいい」「人を殺す体験がしたかった」と、若者を中心に不可解な動機が目立つ。
これも、ネットやゲームの普及が影を落としているのだろうか。暴力的な映像に接するたびに、攻撃性が強まるデータもあるという。「リセット」可能なバーチャル(仮想現実)の世界では人の痛みに対する共感性が乏しくなり、思いやりも生まれない。無差別犯罪が横行する世の中、このままでは人間が怖くなる。
(社会部・広岡尚弥)