開港二十周年を迎えた岡山市日応寺の岡山空港にきょうから、岡山と香港を結ぶ待望の定期便が就航する。
東アジアの金融・貿易センターとして高成長を続ける香港への直行便は、観光や新たなビジネスチャンス、経済交流につながる大きな可能性を秘める。利用促進によってさらなる飛躍を目指さねばなるまい。
岡山空港の国際線はソウル、上海、グアム、北京・大連に続いて五路線目である。県が設置、管理する第三種空港としては、富山空港の四路線を抜いて最多となる。
定期便は香港エクスプレス航空が、火、水、土曜日の週三便運航する。往復で年間二万五千人の乗客と七百八十トンの貨物が輸送できる。所要時間は三時間半―四時間で、岡山には午後二時半に到着、折り返し便は同三時半に出発する。従来の関西空港利用や上海経由などに比べ、二―四時間程度短縮できる。
岡山県は初便で石井正弘知事を団長とする公式訪問団を派遣し、香港政庁などを表敬訪問する。路線開設に合わせて二十七日から三日間、香港で岡山への旅行をPRする観光展も開く予定だ。実のある成果を挙げてほしい。
香港を訪れていた岡山県民は年間四千―五千人とされる。香港エクスプレス航空が目標に掲げる搭乗率は70%だ。
旅行会社では観光地巡りやショッピング、グルメをメーンに据えたツアーや、カジノのメッカ・マカオ観光を組み込んだプランなどで旅行需要の掘り起こしに知恵を絞る。搭乗率を維持するためには、香港から岡山へ観光客を呼び込む努力も欠かせまい。
香港は一九九七年に英国から中国に主権が返還された。中国本土の好況などを受け、二〇〇六年の域内総生産(GDP)成長率は6・9%と発展を続け、規制緩和も進む。観光だけでなく、経済交流の進展にも弾みをつけたい。
香港に進出する岡山県内の企業は電子機器や繊維など十二社だが、内陸貿易の中継拠点としての重要性は、さらに高まるとみられる。直行便は新たな地場企業進出の布石を打つチャンスともなろう。
香港の高級スーパーに特設店舗を設け、岡山特産果物の輸出強化に乗り出している県にとっても、販路拡大への足掛かりとなろう。
まずは利用拡大で着実に実績を積み上げることが必要だ。岡山空港の広域拠点としての優位性を生かしながら、経済のグローバル化を視野に成長路線に育てていくことが重要だろう。
米国産輸入牛肉から、牛海綿状脳症(BSE)の原因物質がたまりやすく、輸入が認められていない特定危険部位の脊柱(せきちゅう)が見つかった。食の安全・安心への関心が高まっているだけに、消費者の不信感は強まろう。
問題の脊柱は、大手牛丼チェーン「吉野家」の埼玉県にある加工工場で従業員が見つけた。消費者の口に入る前に食い止めたが、米側のずさんな検査体制と、日本の水際検査体制の甘さが露呈したといえよう。
日本は現在、米国産牛肉について特定危険部位を除去した生後二十カ月以下の牛に限り輸入を認めている。特定危険部位の混入は、二〇〇六年一月にも発覚し、日本は輸入の全面停止に踏み切った。だが、その年の夏には輸入を再開し、さらに輸入条件の緩和を強く要求する米側に押され、昨年から輸入時に輸入業者にすべての箱を開けさせて内容を調べる「全箱検査」を撤廃して抽出検査とした。
今回の混入で米農務省は「日本に輸出するものではなかった」と、誤って出荷したことを強調する。問題の牛肉を出荷したカリフォルニア州の工場に対し、混入の原因が解明されるまで日本への出荷を禁止したことも明らかにした。
日本政府は、米側の単純ミスとの主張を受け入れ、輸入停止などの措置は必要ないとしている。急きょ、検査体制の強化を打ち出したが、全箱検査ではなく、抽出率を上げるにとどまっている。
日米両政府の対応に消費者は納得できまい。今回は大手牛丼チェーンだから独自の検査で発見できたが、水際検査をすり抜ければそのまま市場に出回ってしまう恐れがあると考えざるを得ない。肝心なことは、消費者の信頼である。政府の判断は甘すぎないか。
(2008年4月26日掲載)