【パリ26日高木昭彦】スペインの左派サパテロ新内閣が、首相を含めた18の閣僚ポストを男女9人で分け合った「男女平等」内閣として欧州で注目を集める。中でもひときわ話題を呼んでいるのが、女性初の国防相で妊娠8カ月のカルメ・チャコンさん(37)だ。
現地報道によると、チャコンさんはバルセロナ近郊の出身。政治キャリアは1999年の市議当選に始まる。2000年に社会労働党の下院議員に当選し、サパテロ政権誕生後には住宅相を務めた。環境保護と平和主義を政治信条とし、社会労働党では「サパテロ首相の後継者」とも見られるスター的存在だ。
ただ、右派の反発は強い。スペイン軍は1988年に女性の入隊を認め、現在は全体の12%を占めるが、女性の将官級幹部はゼロ。退役軍人団体などは「軍の身分階層に対する侮辱だ」「軍経験のない女性、おまけに(中央政府からの独立志向が強い)カタルーニャの出身だ」と首相による起用を批判する。
しかし、チャコンさんにひるむ様子はない。今月14日、就任直後の閲兵式では「軍の近代化と女性入隊促進に取り組む」とあいさつ。5日後には婦人科医を連れてアフガニスタンの駐留部隊視察に飛んだ。驚いたメディアは「ポストに対する強い意欲と責任感を証明した」と評価。近くコソボやレバノンの駐留部隊も視察する予定だ。
チャコンさんは「女性が軍を指揮するということは、軍が社会と融和している証拠」と述べ、男女平等社会の象徴としての立場も強調。現在、国民の関心は国防相の産休がどうなるかに集まっているという。
=2008/04/26付 西日本新聞夕刊=