aamall

2008年04月23日

オムニバス「うたとギター。ピアノ。ことば。」

 今年の4月から小西康陽さんが主宰するコロムビア*レディメイドのサイトが変わっているのだが、それにはほぼ毎日小西さんの文章と、ゲストの文章がまるで新聞の連載漫画のように、更新されているのだ。ぼくはとにかく小西さんの書く文章が好きなのだが、それが日替わりでまるでわんこそばのように、次から次へと読んでいけるなんてほんとうに幸せこのうえない。この時代に生きていてよかった。

 そして毎日サイトをのぞいていて、楽しみにしていたのはオムニバスの「うたとギター。ピアノ。ことば。」である。スムースエースが野本かりあさんの名曲、「どうしてこんなにあなたが好きなのだろう。」をカバーしており、そして野本さんの新曲もあり、さらに小西さんの新曲が3曲も収録されている! ぼくはひさしぶりにこのCDをフライング・ゲットしてしまったほどだ。

 まずジャケット。驚いたのがDVDの縦長のクリア・ケースを使っていたこと。これはコロンブスの卵というか、やられてしまった。こういう発想もありだよな、と。上記のサイトでの小西さん曰く、それは68ページのブックレットを入れたかったから、とのこと。そのブックレット、ピチカート・ファイヴの映像文化の集大成的なDVD「ザ・バンド・オヴ・トゥエンティ・センチュリィ」のブックレットに通ずる力作である。

 そして肝心の中身。全曲やさしい肌触りの、手作り感あふれるアコースティックな響きの曲たちばかりである。スムースエースの「どうしてこんなにあなたが好きなのだろう。」はコットンの肌触りのコーラスが心地よい。この曲はどうしてこれほどまでに切なかったのか、と思わせるほどである。ちなみにCDショップから車で帰るときに、大通公園の横を通ったらこの曲がかかっていた。今年はやたら早く咲きすぎて、葉がまだ出ないうちに咲いた満開の桜とこの曲がシンクロし、ぼくは一瞬めまいを憶えたのだった。音楽の神様が降りた一瞬だった。

 もちろん他の曲たちも名曲ぞろいである。ミズノマリさんの「東京の街に雪が降る日、ふたりの恋は終わった。」なんて聴いていると、小西さんはミズノさんを夏木マリさんの後釜に考えているのではないかと思うほど。この曲を聴いて、ミズノさんの小西さんプロデュースのシャンソン・アルバムを聴いてみたいと思うのは、きっとぼくだけではないはず。

 吉川智子さんの「涙もろくなった。」なんて小西メロディ炸裂の、吉岡忍さんの「素晴らしいアイデア」にも通ずるソフト・ロックの名曲である。とにかく吉川さんの声がクールでかっこいい。そういえば小西さんのなかで最近タイトルに句点をつけるのが流行っているのか。そしてレモンさんの「歌姫」。キャロル・キングさんのようなざっくりとした魅力にあふれた曲だ。はたしてこの曲を安室奈美恵さんが歌う日が来るのかどうなのか。

 小西さん作の曲以外ももちろんすばらしい。エレガンスな甲田益也子さんの「エーデルワイス」、フォークシィな市川実和子さんの「私の家」、スウィート・ウイスパーなビーチェさんの「リリー オン ザ ヒル」、パーフェクト・ワールドな野本かりあさんの「わるいくせ」、ダンディな長谷川きよしさんの「僕のピアノのそばにおいで」(どうやら小西さんはこの曲でこのアルバムのタイトルを決めたような気がするのだが、どうなのか)、ポップ・マエストロな前園直樹さんの「すてきなあなたに」。またこの曲が感動的だったりするのだ。

 音楽への憧れにあふれた10曲。歌への愛にあふれた10曲。ぼくは全曲聴き通して、また最初から聴いてしまうのだった。



geno1132 at 01:34 │TrackBack(0)clip!

トラックバックURL