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【コラム】香港メディアの実名報道に思う(下)

 韓国の場合はどうか。似たような事件を報じる場合は経緯だけを伝え、人物が特定できないように「金某さん」「李某さん」「Kさん」「Lさん」などと姓のみ、またはイニシャルで書くのが一般的だ。生々しい写真が掲載されることはなく、顔も人物が特定できないようにモザイク処理を施す。

 マスコミ事情のこうした相違について、香港で活動するスティーブン・キム弁護士は「法律的な裏づけと商業主義が巧妙に結び付いた香港の報道にも問題があるが、まるで暗号文の韓国マスコミにも問題がある」と指摘した。香港では虚偽ではない真実を報じる場合には名誉棄損に問われない英米法体系に属するため、遠慮なく実名や当事者の写真を掲載する。これに対し、韓国では事実の報道であっても、対象者が望まざる場合には名誉棄損で告訴できる大陸法体系に属しているため、実名報道に慎重だという説明だ。

 行き過ぎた実名報道が被害者と当事者のプライバシーを侵害する点は明らかだ。しかし、逆に名誉棄損で訴えられることを過度に意識すれば、記事ではなくイニシャルだらけの暗号文になってしまい、読者を混乱させる。特に韓国の場合、幼児殺人や性的暴行の常習犯など倫理に著しく反する犯罪の容疑者の顔すらも警察がマスクで隠すため見ることができない。香港のように何でもかんでも実名報道するのも行き過ぎだが、名誉棄損を恐れるあまり、萎縮しすぎる報道も問題だ。

 韓国メディアも匿名報道と実名報道の接点を真剣に探る時期に来ている。

香港=李恒洙(イ・ハンス)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報JNS
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