埼玉県深谷市が、市販のアマチュア無線機で通話が傍受できるアナログ信号式のコードレス電話機を全庁的に使っていたことが25日、分かった。戸籍や住民票、税金の収納状況、福祉関連の相談など、市民のプライバシーにかかわる情報が傍受された可能性がある。毎日新聞の取材を受け、市はアナログ式電話機の使用を中止した。総務省や通信機器専門家から「役所が使っていたのは驚きだ」との声が出ている。
市危機管理課によると、親機と子機が使えるコードレス電話を10年以上前から導入し、現在36台ある。多くがアナログ式とみられる。市民課や福祉課など本庁舎すべての部署に配備。窓口応対する職員らが頻繁に使用していた。
市が25日午後、受信機を入手して試験すると、敷地外から市職員の会話が傍受できたため、即座に使用を禁止した。市危機管理課は「書類を探しながら電話できて便利なため、各課の要望で導入を進めてきた」というが、福島重昭・市総務部長は「セキュリティーが甘かった」と話した。
NPO法人「日本情報安全管理協会」(東京都)によると、アナログ式のコードレス電話機の場合、親機と子機間の電波は100〜300メートル離れても市販の広域周波数帯受信機で傍受できる。佐藤健次専務理事は「傍受された個人情報が、振り込め詐欺やストーカーなど犯罪行為に使用される可能性がある。アナログ式の危険性は一般に浸透していると思ったが、役所が使っていたのは驚き」と話している。
電話機大手の「パナソニックコミュニケーションズ」(福岡市)は、取扱説明書で「傍受の危険性」を明記している。6年前からは、国内向けの電話機はすべてデジタル式に切り替えたという。【金沢衛】
▽石川家継・総務省地域情報政策室課長補佐の話 実態調査したことはなく、各自治体は固定電話機を使用していると思っていた。危険な面があり、(デジタル式との)交換を進めてほしい。各地の状況把握も検討したい。
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