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「心神喪失」で有罪はダメ…「鑑定尊重を」最高裁初判断

2008年04月26日06時20分

 裁判で2度実施された精神鑑定の結果がいずれも刑事責任能力がない「心神喪失」だったのに、二審判決で「心神耗弱」で有罪とされた男性被告(39)の上告審で、最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長)は25日、「鑑定結果は信用でき、心神耗弱と認めるのは困難」として、二審判決を破棄し、さらに審理を尽くすため東京高裁に差し戻す判決を言い渡した。

 第二小法廷は判決の中で「専門家である精神科医の意見は、公正さや能力に疑いがあったり、鑑定の前提条件に問題があったりするなどの採用できない事情がない限り、十分に尊重するべきだ」とする初めての判断を示した。

 東京・渋谷のマンションで夫を殺害し、遺体をバラバラにして遺棄したとして殺人の罪などに問われている三橋歌織被告(33)の裁判でも、2人の医師による被告の精神鑑定の結果は、ともに「心神喪失」の意見だった。28日に東京地裁で判決が言い渡される予定で、判断が注目される。

 この日の裁判は、03年に東京都北区で、かつて勤務していた塗装店の経営者を殴って死なせたとして、男性が傷害致死罪に問われ、犯行当時、統合失調症による幻聴などにどの程度支配されていたかが争点となっていた。

 一審・東京地裁判決は、「心神喪失」とした鑑定結果に基づき無罪。しかし、二審は「犯行前後は合理的な行動をとっていた」として、鑑定結果を採用せず、「心神耗弱」で懲役3年としていた。

 この日の判決で第二小法廷は、被告の責任能力の有無を判断するのは、あくまでも裁判所だとする従来の判例を踏襲した上で、一審と二審で実施された精神鑑定の中身を検討。「鑑定人としての資質を十分備えており、結論を導く過程にも誤りはない。いずれも基本的に信用できる」と結論づけた。

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