「ユ……ユリアス?」
恐る恐る不安げに横へ顔傾け、見つめ返した瞬間、
「ぅ、んんっ……んぅ」
俺の口元は、熱を含んだユリアスの唇に塞がれていた。
キスを交わしては唇を離し、顔の角度を変えてはまたキスをしてくる。
そうやってどの位、口づけを交わしていただろうか。
不意に寝台に突っ伏している右膝を手に取ったユリアスは、ぐっと持ち上げ、俺の身体を反転させる。
「ひゃっ、あぁぁ……っ!」
繋がったままの状態で、強引気味に身体を仰向けに反された俺の口から、刺激に反応した艶かしい声が漏れた。
燃えるように熱い楔で回転するように内壁を擦られた身体は、一気に駆けめぐった快感に籠絡される。
「……ユ、はぁぁ…ぁっ、ユリ……アス……」
じれったくてもどかしい俺は、隠さずにやわやわと腰を揺らす。
そんな淫猥な姿をうっとりするように上から見下ろしていたユリアスは、俺の頬に触れ、再び口を開いた。
「……愛している」
地位や名誉や持って生まれた王者としての資質はもちろんのこと、その美しく威風堂堂とした容姿をはじめ、
おそらく全ての事柄において郡を抜きに出ている存在に、愛を囁かれて何も感じない人はいないだろう。
大げさではなく、普通の状態でも人の心を引き寄せ、
惑わせるフェロモン垂れ流し状態の最上級男に言い寄られれば、きっと女の子なら間違いなくイチコロだ。
切なく、そして甘くほろ苦いような思いに胸をキュッと締めつけられた俺の瞳から、ハラハラと涙が零れ落ちていく。
次から次へとあふれ出す涙を指先で拭い取りながら、ユリアスは困ったような表情で、戸惑った瞳を向けている。
「何故に泣く?」
(―――あれ。何で、俺……泣いてるんだろ)
自分でも、何で泣いていているのかわからなかった……。
涙に滲む視界に映る、ユリアスの姿。
そして、切なくて苦しかった胸の奥がじんわりと温かくなり、まるで女の子を好きになった時みたいにドキドキと逸鳴る鼓動。
(ああ、そうか。俺、ユリアスに恋してるんだ……)
そう気づいてしまえば意外に呆気ないもので、今までもやもやしていた心のわだかまりは消え失せ、自然と顔がほころぶ。
熱く疼き続けている身体を持て余しながら目を閉じた俺は、ふぅっと短い息を吐き出した。
そしてゆっくりと瞼を開けると、一途なまでに熱く俺を求める視線に目を合わせ、
「…………き……」
けれど、やっと声に出して囁いた声は、消え入りそうに小さく、ユリアスには届かない。
「何だ……?」
首を傾げ、不思議そうに俺を食い入るように覗き込む姿に、乙女のようにドキドキと胸をときめかせながら、苦笑を漏らす。
「……好き。俺も、ユリアスが好きだ」
そう告白すると、驚いて目を大きく見開いている深く青い双眸へ、広げた両腕を差し伸べる。
すぐに、鍛えられた肉体が覆いかぶさり、俺の唇を奪う。
そして一旦離すと、今度は俺のえり首に顔を埋め、強く吸い上げていく。
「ぁ、っ……んんっ……」
たったそれだけのことでも、辺りを充満させている濃密なまでの特殊な甘い芳香に包まれている身体は、歓喜に打ち震える。
ユリアスは、俺の片方の脚を自分の肩の上に乗せると、激しく腰を使い始めた。
「あ…っ、ぁっ、あぁぁ……っ」
途端に、待ち望んでいた快楽の波が身体の全身に襲い掛かる。
(……好き、ユリアス……)
そう思いながら、ユリアスの腕にしがみつく。
そんな俺を抱き込み、弾ませた腰をぐっと一際深く挿し抜かれ、
「ひっ、あぁっ……ユ、ユリアス―――…ッ!」
目の前が真っ白になって慟哭した俺は、恋しい男の名を呼びながら果てた。
それでも一向に静まる様子は無く、まだ足りないと飢えたように訴える熱い腰がしなり、
「あ……あぁっ、……ユ―――はぁ、ぁ……」
求めるように甘い喘ぎ声が零れる。
一方、きつく締めつけられ、ほぼ同時に達したユリアスの自身も瞬く間に膨れ上がり、脈々と脈動していた。
部屋の燭台の炎が妖しく揺らぐ中、二人は、尽きることのない欲望を求め合う。
そうして尽きることがない甘く濃密な情交に、明け方近くまで艶かしい声が止むことはなかった……。
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