Fate 4

体中の血液が急速に騒ぎ立ち、自分の意思とは無関係にどんどん追い立てられる。
こんなことは初めてで、パニックを起こしそうになる。
(どうしちゃったんだ、俺の身体……?!)
急速に熱が股間に集中し、下半身から力が抜けて、もう立っていられそうにない。
そんな萎えそうになった俺の腰を、男の強靭な腕が抱き寄せる。

「ゃ……ぁっ」

下半身が密着し、俺の身体がビクリと反応する。
男相手に欲情するなんて自分でも信じられないが、あまりの恥ずかしさに身が震える。
「大丈夫……か?」
そう問う男の声も、欲情に満ちているように聞こえるのは気の所為だろうか。
長い指が俺の頬に向かってゆっくり伸ばされ、そして……ヴェール越しに触れる。
「……は…ぁっ、…ぁ……ゃっ」
たったそれだけなのに物凄く感じてしまい、俺の口から甘い吐息が零れる。
もう、おかしくなりそうだった。
男の美貌が間近になり、ヴェール越しの唇に男の熱い吐息がかかる。
(ああ、このまま……キス…して欲しい―――…)
そう思ってしまった刹那。

「「マディーナ様―――!」」
    

王女のを呼ぶ声に、ハッと我に返った俺。
その方向へ視線を向けると、懸命にこちらに駆け寄るセシアと、本物のマディーナ王女付きの護衛であるアルザスの姿が見えた。
特にアルザスは、今まで見たことがないような鬼気迫るような表情をしている。
  
「チッ」
俺を抱きかかえている男が、突然、忌々しそうに舌を打つ。
そして、顔を男に戻せば、その男の背後に究竟な男たちが控えていることに初めて気づいた俺。
(ひぇぇ―――…っ。この人たちに、全部見られてたのか?!)
男に欲情し、興奮し……
そんな、信じられないような姿を間近で見られていたんだと悟った俺は、一瞬で穴があったら入りたいモードに突入する。
(うわ、まじ恥ずかしい―――…)
と、心の中で叫ぶ中、
「マディーナ様、こちらに」
カツカツと靴音を鳴らしながら俺の目前に近づいたアルザスが、ぐいっと少し強引気味に、俺を男から引き離した。

ウサギを探した時に着いたドレスの汚れを見て、勘違いしたのだろう。
ものすごい力で俺の両肩を掴み、
「お怪我は?」
これまた、ものすごく焦った顔で聞いてきた。
申し訳なくて、居た堪れなくなった俺は、小さな声で「……ないです」と答えるのが精一杯だった。

そして、異変に気づき、慌てて近寄ろうとした兵士たちに向けて片手を挙げて、俺に近づくのを制したアルザスは、俺を見下ろして言う。
「内殿からお出になられてはいけないと言うことは、分かっておいでですよね?」
うんうん、と俺は首を縦に振る。
「……ごめんなさい。ルビーを探してたら、こっちに出ちゃって」
すると、微かに歪めた表情のまま、ふぅっと息を吐く。
その後ろで、胸の前で祈るように掌を組んだセシアがはらはらした様子で見つめている。

心配をかけてしまった二人に、ごめんなさい、ともう一度詫びようとした時、目を細め、剣呑な目つきを露にしたアルザスが動いた。
俺の身体を背中の後ろに隠すように前へ出ると、蒼色の双眼の男と対峙するように向き合う。

 

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