日本ビクターの佐藤国彦社長は25日会見し、国内の家庭用液晶テレビを大幅縮小することを柱としたテレビ事業の再建計画を正式発表した。大手家電量販店からビクター製テレビが消える可能性が高く、国内市場から事実上撤退することになる。ビクターは日本のテレビ技術開発をリードしてきたが、激しい価格競争の波にのまれる形になった。
計画では、国内家庭向けは42型と47型の大画面液晶テレビに特化し、オーディオ機器とセットでホームシアター形式で販売する。現在30万台の家庭向けテレビの生産は、09年度に10分の1の3万5000台へと大幅削減。薄型テレビの価格競争を繰り広げる大手量販店からは撤退し、販売先を同社製品の専門店中心に絞る方針だ。
同社がこの日発表した08年3月期連結決算は、テレビ事業の不振で475億円の最終(当期)赤字となった。テレビ事業の売り上げの4分の1は国内が占めるが、国内テレビ事業は「数十億円の赤字」(同社)で、業務用と海外の家庭用テレビに経営資源を集中させ、09年度にテレビ事業の黒字化を目指す。
佐藤社長は「つらい決断だが、血止めしないとテレビ事業だけでなく全体に影響する」と述べた。【秋本裕子】
日本ビクターは、高い技術力で日本のテレビ開発の歴史をリードしてきた。世界で初めてブラウン管に文字(いろはの「イ」)を映し出し、映像の電送と受像に成功した浜松高等工業学校(現・静岡大工学部)の高柳健次郎氏を招へい。1939年に現在のテレビの原形となる業務用テレビ受像機を日本で初めて開発した。
05年には、液晶テレビに動画を滑らかに映し出す倍速技術を世界で初めて搭載。カラーテレビの普及で需要が高まった家庭用ビデオでは、世界標準になったVHS方式も開発した。
しかし、業界の開発競争をけん引してきた「名門」も、世界的に激しくなっている競争には勝てなかった。
毎日新聞 2008年4月25日 21時33分(最終更新 4月25日 23時22分)