ワシントン(AP) 「手術を受ければ眼鏡が不要になる」と盛んに宣伝されている視力矯正手術のレーシック。しかし手術を受けた全員が満足しているわけではない。米医薬品局(FDA)の諮問委員会は25日、患者から実態を聞く公聴会を開き、出席した患者が目のひどい痛みや視界がぼやけるなどの症状を訴えた。
ワシントンに住むデビッド・シェルさんは1998年にレーシック手術を受けて以来、視界がかすんで物が二重に見え、白い光が見えるようになったという。
フィラデルフィア郊外のコリン・ドリアンさんは、瞳孔が大きくドライアイがひどかったため本来レーシック手術には適さないはずだったが手術を受け、その後6年間、目の痛みと見えにくさに苦しんで、昨年自殺した。父親が遺書を読み上げて証言した。
眼科クリニックで働いていたマット・コトソボロスさんは2006年に高度なレーシック手術を受けた。視力が1.0に回復したため医師には成功だと言われたが、過去2年間、絶え間ない痛みに苦しんでいるといい、「患者たちは声のない無力な被害者のままでいたくないと思っている」と訴えた。
米国では年間約70万人がレーシック手術を受けており、ゴルフのタイガー・ウッズなど有名スポーツ選手の利用も多い。そのうち大多数は視力が回復し、1.0以上になる人も多い。しかしごく一部、恐らく1%以下だが、視力低下、極度のドライアイ、夜間運転ができなくなるなど生涯にわたる後遺症を抱えることもある。
諮問委員会は、FDAがレーシック手術について行っている注意喚起をもっと明確化するよう提言。1)後遺症を持つ患者は物がどんな風に見えているかを写真で説明する、2)ドライアイなどの後遺症が発生する確率を明記する、3)瞳孔の大きい人や極度の近視などレーシックが適さない状態を明記する、4)近視をレーシックで固定すると早いうちから老眼鏡が必要になる場合もあることを明記する――などを提言した。
眼科医の調査によれば、レーシック手術の結果に不満を持つのは約5%にすぎない。しかし深刻な問題を抱える人がどの程度いるのかといった詳しい実態は明らかになっていない。
FDAもレーシック手術を規制する考えはないが、眼科医と協力して来年、大規模な実態調査に着手する。