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社会

事故現場の犠牲者用タグ、記入の改善を 兵庫医大教授

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 尼崎JR脱線事故の現場で、被害者の病院搬送優先順位を決めた「トリアージ」を検証している兵庫医科大の吉永和正教授(59)がこのほど、「死亡もしくは救命不可能」を示す黒色タグ(識別票)に発見状況や確認時刻、記入者名などを詳しく記すべき-とする報告書を厚生労働省に提出した。事故で使われた黒色タグを調べた結果、記載情報が少なく「故人の最期を知りたい」という遺族の願いに応えられていなかった。黒色タグの扱いに遺族ケアの視点を取り入れ、改善する必要を指摘している。

 死者百七人、負傷者五百六十二人を出した事故では、国内で初めて大規模なトリアージを実施。救命可能な人を円滑に搬送した「災害医療の成功例」とされる。一方、遺族のケアを担う心療内科医らは、「本当に助からなかったのか」と悲しみを深めている遺族の実情を指摘していた。

 吉永教授らの調査によると、確認した尼崎事故の黒色タグ七十四枚で、死因判断に有効な情報となる「挟まれていた」といった状況を記したものは皆無だった。

 重傷者と救命不可能者を早く判別する事故発生初期に使われた三十四枚に限ると、確認時刻を書いたものは五割弱、トリアージ実施者の記入も約六割にとどまった。

 吉永教授は報告書でこれらの改善を提言。「死者の最後のメッセージを残し、遺族に十分な情報を提供することが必要」と強調した上で、「どのように亡くなったかを正確に記録し分析することは、事故死の予防にもつながる」としている。

 災害救急の分野で死者を取り上げた研究は例がないといい、二〇〇七年度からの取り組みは厚生労働省の補助金支給対象になっている。〇九年度まで、事故発生の早い段階から専門家が連携して遺族ケアに当たる方法も探り、提案していく。(中島摩子)

 トリアージ 大事故や大規模災害で多数のけが人が発生した際、現場で医師らが負傷程度を判断し、病院搬送や治療の優先順位を決めること。患者に黒(死亡もしくは救命不可能)▽赤(緊急治療が必要な重症)▽黄(治療が遅れても生命に危険がない)▽緑(軽症)-の4段階のタグ(識別票)を付ける。タグには患者情報の記入欄もある。緊急性が高い順に搬送して効率的な治療につなげるとともに、病院の混乱を防ぐことが目的で、阪神・淡路大震災を機に普及した。

(4/26 08:48)

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