原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物について、甘利明経済産業相は25日、「青森県を最終処分地にしないことを改めて確約する」との文書を三村申吾知事に手渡した。三村知事は「明確かつ明快な確約が得られ、県民の安心につながる」と語った。だが一方で、県政界からは「県民の不安解消には全くならない」との声も聞かれた。13年ぶりの国と県との確約書は、評価が割れた。【河内敏康、後藤豪、喜浦遊】
最終処分地に関して三村知事は、過去の確約書に基づき「誘致しない」と繰り返し主張してきた。ところが、今年1月に東通村議の有志が核燃に関する勉強会を開くなど誘致を視野に入れた動きが出始めていた。三村知事はこうした動きをけん制する目的で、3月に大臣を訪問し文書を出すよう要請していた。
今回の確約書では、94年、95年に当時の知事が結んだ文書は、現在も引き継がれているとした。その上で「青森県を最終処分地にしないことを改めて確約する」と記し、過去の文書にあった「知事の了承なくして」の部分はなくなった。
同日、六ケ所村役場に文書の内容説明に行った蝦名武副知事は、古川健治村長に「(これまでの確約書より)県民にわかりやすい明快な内容になったと思う」と話した。
古川村長は「国、政府が一体となって最終処分地の早期選定に不退転で取り組むとの回答を得たことは意義があった」と述べた。24日に、貯蔵管理期間の終了時点までに廃棄物を県外に搬出するとの確約書を三村知事に提出した日本原燃(六ケ所村)の児島伊佐美社長は、「大変重いものと受け止めている。国とも協力して、最終処分地の選定に全力で取り組んでいく」と話した。
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県議会の野党3会派は県議会2月定例会で、「過去2回の文書の内容では、県議会や県民の関与が保証されない」として、「青森県を高レベル放射性廃棄物最終処分地としないことを宣言する条例案」を提案した。しかし、議案の質疑も行われず、本会議で賛成少数で否決された。
提案者の一人の鹿内博県議(県民クラブ)は「(過去の文書を引き継ぐという)1項目目がすべての前提になっているため、『知事の了承なくして』の部分は生きており矛盾している。説得力のない軽い文書だ」と反論。諏訪益一県議(共産)も「本当の担保にはならないはず。限界がある確約書だ」と批判した。
最終処分地の問題では、かつて高知県東洋町が名乗りを上げたが、反対派町長の当選で動きが収束。選定作業は難航している。
■ことば
使用済み核燃料の再処理でプルトニウムなどを取り出した後に残る「核のごみ」を最終処分する場所。ガラスと一緒に溶かし、ステンレス製容器の中で固め(ガラス固化体)、地下300メートル以上にある地中の施設に埋める。施設の広さは約10平方キロ。人体への影響期間は数十万年とも100万年とも言われる。最終処分場の候補地は、実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)が02年末から公募しているが、現在、名乗りを上げたのは高知県東洋町(最終的に拒否)だけ。
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■これまでの確約書の比較■
処分予定地の選定は、地元の了承なしに行われることはない。今後、処分事業の実施主体が処分予定地の選定を進める際に、関係機関の協力を得つつ、貴職の意向が踏まえられるよう努める。
このような状況において、青森県が処分地に選定されることはない。
(11月19日、田中真紀子・科学技術庁長官から北村正哉知事へ)
処分地の選定に当たって、知事の了承なくして青森県を最終処分地にできないし、しないことを確約する。
(4月25日、田中真紀子・科学技術庁長官から木村守男知事へ)
(1)94年および95年の文書は、現在においても引き継がれている。
(2)青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分場にしないことを改めて確約する。
(3)青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分場にしない旨の確約は、今後とも引き継がれていく。
(4)最終処分地については、国民の理解を得て、早期選定が図られるよう、国が前面に立ち政府一体として不退転の決意で取り組む。
(4月25日、甘利明・経済産業相から三村申吾知事へ)
毎日新聞 2008年4月26日 地方版