大間原発、見切り発車 信頼確保に情報公開を
電源開発は「ウランとMOXの核特性の違いを考慮した設計で技術的に確認されている」と、安全性に自信を見せる。全燃料の3分の1程度から順次、MOXの割合を増やす方針だ。 しかし、肝心のプルサーマル計画は進んでいない。使用済み核燃料から再処理で取り出したプルトニウムを年間最大6.5トン使用する計画で、電気事業連合会は2010年度までに16―18基との導入目標を掲げるが、導入原発はいまだにゼロだ。 再処理工場(青森県六ケ所村)が稼働すれば、余剰プルトニウムだけが増える。年間1.1トンの消費を見込む大間原発は、プルサーマル計画の起爆剤としての役割も期待されている。 同原発は06年改定の新耐震指針に基づく安全審査の第一号。電力関係者が「耐震問題は技術論より世論が大きな壁」と漏らすように、審査、特に終盤の遅れは新潟県中越沖地震に伴う“柏崎刈羽ショック”のあおりを受けたことは事実だ。 10年ぶりとなる原発新規立地は、日本の原子力に対する信頼が揺らぐ中で認められた。閉鎖性が指摘される原子力業界。不断の安全確保と情報公開がなければ、国民の不信感は、後戻りできない臨界点に達することになる。大間原発がその意味で、試金石となるのは間違いない。 (むつ支局・村上浩康) ◎町が元気になる、風評被害が心配…歓迎、不安地元に交錯 計画が浮上してから32年、本州最北端の原発にようやく国のゴーサインが出た。経産省が23日、原子炉設置許可を出した大間原発(青森県大間町)。これまで炉型変更や炉心位置移動など、異例ずくめの歩みをたどってきた。地元では歓迎の声が上がる一方で、世界初の試みとなるフルMOX燃料炉に懸念も出ている。 「大きなハードルである設置許可を得たことは大きな喜び。計画を進めてきた多くの先人に心から感謝したい」。金沢満春大間町長は、電源開発から設置許可の報告を受けた同日午後に記者会見。「世界に誇れる原発を起爆剤に、まちづくりを進めていきたい」と晴れやかに語った。 1976年の誘致請願にかかわった松山義文商工会長は「当時は一番の若造。先輩はみんな亡くなってしまった」と長い歳月に思いをはせ、「これで経済も財政も豊かになる。町は間違いなく元気になる」と笑顔を見せた。 大間原発は全炉心にMOX燃料を使う世界初の商業用軽水炉。それだけに地元には不安もつきまとう。町議の1人は「世界初の原発で何かあれば、風評被害など相当な影響がある。日程にこだわらず、慎重を期すべきだ」と話す。 原子炉の建設予定地から、わずか250メートルの場所にある約1ヘクタールの土地にログハウスが建つ。原発反対を貫き、06年5月に亡くなった地権者、故熊谷あさ子さんが建てた「あさこはうす」だ。 「母は難しいことは分からない。けど純粋に、大間の豊かな海や自然、家族を守りたい一心だった」。長女の小笠原厚子さん(53)が、母の孤独な闘いを振り返る。ゆくゆくはログハウスに移り住み、原発の行方を間近で見守ることにしている。 <大間原発計画の歩み> 1976.4 大間町商工会が町議会に環境調査実施を請願 78.5 大間町、国と電源開発に立地適地調査の実施を要請 83.8 電発が立地適地調査を開始 84.12 町議会が原発誘致を決議 85.6 電発が新型転換炉(ATR)建設計画を発表 94.5 電発と周辺漁協の漁業補償交渉妥結 95.8 原子力委員会がATR計画中止と改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)建設を決定 98.8 炉型変更に伴う追加漁業補償交渉妥結 12 旧通産省の第1次公開ヒアリング 99.7 木村守男知事(当時)が建設に同意 8 国の電源開発調整審議会に計画上程 9 電発、原子炉設置許可を申請 2000.2 電発、準備工事に着手 03.2 用地買収を断念し炉心位置変更を発表 6 電発、共有地分割を求め地権者を提訴 04.3 電発、炉心位置変更に伴い原子炉設置許可を再申請 05.1 地権者が建設差し止めを求め電発を提訴 5 共有地分割訴訟で電発勝訴の一審判決 6 原子力安全・保安院の第1次安全審査が終了 10 原子力安全委員会主催の第2次公開ヒアリング 06.3 共有地分割訴訟、二審も電発勝訴 06.9 国が原発耐震設計審査指針を25年ぶりに改定 10 共有地分割訴訟、最高裁が地権者の上告棄却 電発、新耐震指針に基づき許可申請の補正書提出 07.1 地権者側、建設差し止め訴訟を取り下げ 08.4.23 経産省が原子炉設置を許可
2008年04月24日木曜日
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