経済産業省は23日、電力卸大手のJパワー(電源開発)が青森県大間町に計画する大間原子力発電所の設置を許可した。5月に着工し、12年3月の運転開始を予定している。使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランで作る混合酸化物(MOX)燃料の100%使用(フルMOX)を目指す世界初の商業用軽水炉で、日本の核燃料サイクル政策の中核になる。
下北半島先端の津軽海峡に面した約130万平方メートルの敷地に、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を建設する。電気出力は138万3000キロワット。総工費は約4690億円を見込んでいる。Jパワーが建設に向け調査を開始したのは83年で、用地買収の難航などで着工時期が繰り返し延期されてきた。
国はウラン資源の有効利用などを目的に、MOX燃料を商業用原発で燃やすプルサーマル計画を推進しており、電力業界は10年度までに16~18基の原発でプルサーマルの導入を目指している。大間以外は既存の原発で、MOX燃料の使用割合は4分の1から3分の1程度の見込み。一方、大間原発は運転開始から5~10年の間に100%使用を目指す。【平地修】
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■解説
Jパワー大間原発の設置が許可され、政府と電力業界が進めるプルサーマル計画が一歩前進した。資源小国の日本でエネルギー源確保は課題で、使用済み核燃料を再利用する同計画の進展に関係者は期待する。
ただ、原発の安全性に対する国民の懸念の声も根強く、いかに地元の理解が得られるかが引き続き課題となりそうだ。
「地球温暖化防止に向けて、原発の重要性が世界中で認識されつつある。大間原発には原子力政策で重要な一翼を担ってほしい」。甘利明経済産業相は23日、設置許可の意義を強調した。
燃料の有効活用を目指し、電気事業連合会がプルサーマルの全体計画をまとめたのは97年。大間原発や既存の原発を活用し、10年度までに16~18基がMOX燃料で発電する計画を立てた。
しかし、99年にMOX燃料の検査データ捏造(ねつぞう)問題が発覚。さらに02年には東京電力の原発トラブル隠し問題で同社の計画が「白紙状態」に陥った。関西電力は04年の高温蒸気噴出事故もあって長期間の計画中断を余儀なくされ、業界全体で当初の狙い通りには進んでいない。
今年1月には関電が計画再開を表明するなど、進展の動きもある。ただ、業界内では「不祥事が起きてストップするのが原発の歴史。安全を確保し、地道に住民の理解を得ないと計画は進まない」との見方が出ている。【谷川貴史】
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■ことば
「プルトニウム」と「サーマル・ニュートロン・リアクター」(商業用の軽水炉原発)を組み合わせた和製英語。使用済み核燃料を再処理し、回収したプルトニウムにウランを混ぜたMOX燃料を原発で用いて発電すること。国の核燃料サイクル政策の一環で、燃料の有効利用や、核兵器に転用可能なプルトニウムの消費促進が狙い。ただ、安全性に懸念の声もある。
毎日新聞 2008年4月24日 東京朝刊
4月24日 | 青森・大間原発:経産省、設置許可 世界初「フルMOX」 |
4月15日 | 青森・大間原発:設置を許可へ |