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2008年4月26日

◎ウエイトアジア大会 「聖地」定着へ絶好の機会

 金沢市のいしかわ総合スポーツセンターで二十六日に開幕する2008年アジアウエイ トリフティング選手権は、金沢がこの競技の「聖地」として名声を高め、ファンを増やす絶好の機会である。選手にとっては北京五輪の出場権をかけた最後の戦いであり、一人でも多くの人が会場に足を運び、世界レベルの真剣勝負の熱気に触れたい。

 国際大会を成功に導く経験はこの地域にとって大きな財産であり、スポーツ振興の弾み となる。有望な地元選手の応援を通して、地域に一体感をもたらすなど多くの成果が期待できるだろう。

 総務、文部科学両省は二〇〇五年度から、小中高校生のスポーツ全国大会を継続開催す る自治体に対し、最長十年間にわたって財政支援する「スポーツ拠点づくり推進事業」をスタートさせた。野球の甲子園やラグビーの花園のように、青少年があこがれる聖地をつくる狙いであり、金沢はウエイトリフティング高校選抜大会の継続開催地となっている。

 いしかわ総合スポーツセンターという素晴らしい施設が今月完成し、それにふさわしい 舞台はできたが、ハコモノだけでは不十分である。やはり、その競技に関心や理解を示すファンや、競技を支える人材が他の地域以上に増えてこそ本物の聖地といえる。

 ウエイトリフティングはアジアの強豪が世界をリードしており、そのナンバーワンを決 めるのが今大会である。人間の限界に挑戦する力闘にじかに触れれば、その魅力にとりつかれるだろう。大会では多くのボランティアが受付や通訳など運営の裏方役を務めるのも心強い。

 ウエイトリフティングの競技人口は決して多くはないが、石川は全国トップクラスの実 力である。ファンが増えれば選手の何よりの励みとなり、さらにレベルの高い選手の育成にもつながる。今大会でそうした好循環を引き出し、相撲やトランポリン、飛び込みなどと並ぶ石川のお家芸にしたい。

 金沢や石川県が競技レベルでもトップと幅広く認知されることで、聖地は単なる場所を 指す言葉でなく、本当の意味での「あこがれの地」となろう。

◎相次ぐ硫化水素自殺 せめて巻き添え防ぎたい

 今年二月から現在まで、硫化水素による自殺が相次いでいる。インターネットの掲示板 を通して広がったとされており、すでに五十人を超えたといわれる。一時はやった練炭ガス自殺と違い、助けようとする家族や近所の人たちを巻き添えにする、はた迷惑な自殺だ。

 毒物中毒の専門家の話では、命を絶つ目的が確実に果たされる方法であるとはいえず、 助かったとしても脳に重い障害が残るため、本人も家族も大きな悩みを背負うことになるという。知ってほしい知識であり、当面の対策としてせめて巻き添えを防ぎたい。

 今月二十三日夜の高知県香南市のケースでは十四歳の中学女生徒が市営住宅の自宅の浴 室で自殺し、ガスを吸った母親らが入院し、七十人以上の住民がのどの痛みや気分が悪くなったことを訴え、病院で手当てを受けたといわれる。

 硫化水素による自殺では、本人が「ガス発生中」などと周囲の人たちに知らせる張り紙 をすることもあり、この少女もそうしていたそうだが、周りの人たちにガスの恐ろしさについての知識がない場合が多く、巻き添えになるようである。

 特定の洗浄剤に、ある成分を混ぜると毒性の強いガスが発生することを利用した自殺方 法で、卵が腐ったような異臭を放つため、異臭に気づいたら助けに入らず、一一九番に通報し、近隣の人たちにも知らせ、室内の空気を入れ換える。硫化水素は空気より比重が重いため、外の新鮮な空気を吸い込んだ後、息を殺して床の上にたまったガスをはき出すことを繰り返すのが大事だ。

 日本では自殺者が年間三万人を超える事態が続いている。自殺を減らす運動が各地で行 われている。硫化水素による自殺に対してもボランティアによって追放運動が始まった。インターネットの掲示板に対する現在の規制では、死に至る毒ガスの発生が客観的に書かれている限り、排除できない。で、書き込みを検索すると、悩みの相談に応じる掲示板も出てくる仕組みが模索されているのだが、決め手になりにくいようだ。


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