北朝鮮による核拡散が明らかになった。六カ国協議の合意であり、「非核化」を実現する重要な過程である「核計画の申告」の中にはっきりと記す必要がある。抜け穴を残さないために。
「シリアは北朝鮮の支援を受けて、ひそかにプルトニウム生産可能な原子炉を建設していた」
米政府は、北朝鮮とシリアの核開発協力の実態を発表するとともに、米議会でも説明した。
この原子炉は、二〇〇七年九月にイスラエルによって爆破されているが、「さまざまな情報から北朝鮮が支援していたと確信」できるという。
また、シリアが国際原子力機関(IAEA)への報告をしなかったなど、「民生用ではない」理由をあげている。
同時に公開されたビデオ映像や写真によると、北朝鮮・寧辺にある核施設によく似た構造の原子炉や両国の原子力担当高官が並んでいる場面もあり、生々しい。
「核計画の申告」は、六カ国協議で合意された「第二段階の措置」の柱になる。昨年末までに完了する予定だったが、北朝鮮は一部の申告だけで済まそうとしており、作業は大幅に遅れている。
今回の発表に、北朝鮮が反発するのは間違いなく、再び六カ国協議の停滞が心配になる。
しかし核拡散は、テロ支援にもつながるだけにおろそかにできない。早急に六カ国協議を開いて米政府の説明を聞いて対処する必要がある。拡散が明白なら「申告」に明記するのは当然だ。
先にシンガポールで開かれた米朝首席代表会談では、シリア核開発支援について、米国の懸念を北朝鮮が認め「別文書」に記すことで合意したといわれる。
しかし、米政府内や議会内には安易な妥協への警戒感が強く、今回の発表になったようだ。ブッシュ政権は来年一月の任期満了を控え、北朝鮮の核解決で成果を焦っているのではないか。
「非核化」の過程で抜け穴をつくるようなことがあれば、将来に禍根を残す。米政府は北朝鮮に間違った意思や情報を伝えないよう、言動に注意してほしい。
折よく、先に韓国の李明博大統領が米国、日本を訪問して、首脳会談を行い、日米韓の緊密な連携を再確認したばかりだ。
六カ国協議の調整役である中国とも意思疎通を重ね、周辺国の協力で「すべての核計画を完全かつ正確に申告する」という合意に、漏れがないよう願いたい。
この記事を印刷する