音楽著作権の管理をめぐる独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会が日本音楽著作権協会(JASRAC)に立ち入り検査した。競争促進によりネット時代にふさわしい著作権の活用を目指したい。
テレビやラジオ放送の番組内で使われる音楽の著作権料支払いについて、作曲、作詞家などの権利者と放送局の仲介役を果たしてきたのが同協会だ。
かつては協会が仲介役として著作権管理業務を独占していたが、二〇〇一年から新規参入が認められ、すでに複数の企業が参入している。
だが、新規参入組の業務は期待されたほどの拡大を見せていない。新規事業者は楽曲が使用されるごとに支払う「個別処理」方式をとっているのに対し、協会は放送局から年間収入の一定割合を著作権料として徴収する「包括契約」方式をとっている。
いわば“どんぶり勘定”だが、いちいち使用した曲ごとに支払う必要がなく放送局にとっても便利なうえ、著作権者も協会だけに委託しておけば権利行使をすべて代行してもらえる便利さがある。
しかし、現状を見ると放送分野での音楽著作権収入の90%以上を協会が占めており、公取委は包括契約が競争を妨げる大きな要因と判断しているようだ。
協会がかつて独占的な立場にあったからこそ、多数の著作権者と権利代行の契約を結んで包括契約が可能になった背景がある。
包括契約が独禁法に違反していることが立証されれば、即座に是正すべきはもちろんだ。公取委の検査をきっかけに、しがらみを打ち破り、競争を促進する改革のきっかけにしてほしい。
音楽、アニメ、ゲームなどソフト産業は製造業に続く成長の柱として期待されている。その成否を握るのが著作権の運用だ。
ソフト産業が適切な著作権料を払うのは当然だが、より少ない制約で自由に音楽や映像を使用して新しい作品を生み出せる環境の整備も大切だ。
視聴者の間では過去に放送された番組をネットを通じて好きな時に見たいという要望も強い。
著作権が壁となり、ネットでの番組二次使用が進まないのが現状だ。政府が著作権の解釈で放送とネットを区別しているのが大きな理由だが、関係者の知恵で著作権者の理解を得て壁を越えることも可能ではないか。慣行を抜け出す業界の意識改革も必要だ。
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