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【主張】思いやり予算 残念な参院否決と民主党
在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に関する新たな特別協定が参院本会議で否決されたものの、衆院議決を優先する憲法規定により承認された。
これまでの特別協定は3月末に期限が切れ、4月1日から予算の根拠となる協定に空白期間が生じていた。昭和53年度の制度導入以来、初めての事態だ。空白はようやく解消されるが、米国の日本に対する信頼が損なわれたことを重く受け止めるべきである。
日本は日米安保条約第6条で米軍に対し、施設・区域の使用を約束している。駐留経費が米軍による施設・区域の安定的な使用を確保し、日米安保体制の運用を円滑にしているのである。
その意味できわめて残念なのは、参院で民主党などが新協定を反対多数で否決したことである。条約承認案が国会で否決されたのは、衆参両院を通じて現憲法下では初めてだ。
この参院の判断は、参院の存在意義と役割をめぐる論議に発展することが避けられまい。
参院議長の諮問機関である「参議院の将来像を考える有識者懇談会」は平成12年、「良識の府」「再考の府」の機能を活性化するなどの意見書をまとめたが、そうした方向を今回、自ら否定したといえなくはない。
民主党の反対も、政権を目指す政党なのかどうかをめぐる疑問符を生じさせた。
日米安保体制の根幹である新協定への反対は日米同盟を否定したともいえるからだ。安全保障をめぐるこうした国内の分裂は、内外に誤ったメッセージを送ったことになるだろう。
参院本会議で民主党議員は「駐留経費負担が適切かどうか検証し、見直す点は見直すべきだ」と反対討論を行った。
新協定の期限は3年間であり、労務費などを現行水準に据え置く一方、光熱水費を3年間で計8億円削減する。協定に基づく今年度の負担総額は1438億円にのぼる。今回、米側が一層の節約努力を行うと明記されたが、民主党の指摘のように無駄遣いは許されない。今後、日米は包括的に見直すことで一致しており、国民の理解を得る努力が必要だ。
同時に日本の防衛に生命を賭する米側への配慮も欠かせない。窮地に立つ同盟国を思いやる心が同盟の絆(きずな)を強めていくからだ。