Jパワー(電源開発)の株式追加取得をめぐって、日本政府から株買い増しの中止勧告を受けた英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)が勧告の受け入れ拒否を表明した。
これを受けて、政府は投資の中止命令を出す方針だ。これまで「抜かずの宝刀」だった外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく中止命令の初の発動となる。
理由として、政府は電力供給や原子力政策に支障の出る恐れをあげる。Jパワーは青森県に原子力発電所を新設し、プルトニウム燃料の利用に取り組む計画だ。さらに広域の送電網を運用し、日本全体の電力供給に大きな役割を果たしている。
その重要性は認めるにしても、ではなぜTCIが20%のJパワー株式を取得すると問題なのか、その説明が不十分ではないか。
財務相と経済産業相の連名で発表された談話は、「TCIが株主権の行使を通じてJパワーの財務体質をき損し、基幹設備への設備投資に悪影響が懸念される」としている。
もしそうならTCIのどんな言動や過去の投資行動が、懸念を呼び起こすのか、より丁寧な説明がほしかった。説明を重ねることで、外資規制発動の基準が明確になり、規制の予見可能性が高まる効果もある。
加えて、資本規制を発動する前に、原発の安全確保やインフラ投資の確保について、行為規制などで対応できないのかも検討すべきだ。だれが株主になったとしても、電力会社にとって最低限必要な業務はあり、それに政府が目を光らせることの必要性は私たちも理解できる。
経済産業省は多数のOBが電力会社に在籍し、Jパワーの取締役も13人中2人が同省の出身者だ。これも誤解を招く事態である。
国の安全保障といいながら、省益を守るための外資規制ではないか――。こんな疑念を打ち消すためにも、これを機に「天下り自粛」を検討してみたらどうだろう。
「日本は閉じた国」というイメージが海外に広がると、対日直接投資が進まなくなる。最低限の外資規制は必要だが、その執行には透明性と細心の注意、そして納得のいく説明が欠かせない。