公正取引委員会が独占禁止法違反(私的独占)で立ち入り検査に踏み切った背景には、日本音楽著作権協会(JASRAC)が、契約手法の改善を求める公取委の「警告」を無視した形で市場の独占状態を続けてきたという実態がある。
JASRACと放送局側は79年から、曲数に関係なく一定の料金を徴収する「包括的利用許諾契約」を続けてきた。しかし、公取委は03年3月に公表した「デジタルコンテンツと競争政策に関する研究会報告書」の中で、この契約を「競争阻害要因となり得る」と指摘した。新規参入業者と利用者(放送局側)が曲別契約をすると、その分だけ「利用者が支払うべき使用料が増加してしまう」ため、契約が促進されないからだ。
JASRACは、その後も放送局側とルールを変更せず、市場規模ベースで約99%と異常な寡占状態を続けた。文化審議会でこの契約問題が検討されたが、06年1月の報告書では「見直しを求める意見があった」などの表現にとどめ、所管する文化庁自身にも変化を求める動きはなかった。
01年10月に著作権等管理事業法が施行され、「イーライセンス」(東京都港区)など7業者が新規参入したが、JASRACのガリバーぶりだけが目立ち、一向に進まなかった規制緩和。インターネットなどによる音楽配信市場が拡大する中、JASRACだけでなく放送局側にも慣行の改善を迫るものとなりそうだ。【苅田伸宏、小林直】
毎日新聞 2008年4月24日 2時00分