7時起床。日課である10kmジョギング。「自分の体力があるうちに東京マラソンにでも出てみようかしら」そんな事を思いながら、昨晩の酒を抜く。外は寒い、早く出て来いつくしんぼう。
家に戻りシャワーを浴び、携帯がワンコールだけ鳴って切れた。受信履歴には妖怪ちんぷんかんぷんの名前。もしや寝坊を気にしてくれたか、と思い「起きてるよ」とメールを打つも返信あらず、何のこっちゃ?適当に準備をして、少しゆとりをもって家を出る。今日は『たべごろマンマ』、集合場所である東京駅八重洲口までタクシーが走る。
渋滞。マズイ。
普段なら20分もあれば十分着くのに、もう40分以上タクシーの中。新幹線の時間を聞けば乗れるか乗れないかギリギリ。「時間がギリギリになりそう」という電話を妖怪ちんぷんかんぷんに入れると「すみません、今起きました」さすが。こいつは圧倒的な遅刻だ。期待を裏切らない。そして朝のワンコールは完全に寝ボケていたんだな。
結局、スタッフさんの判断でチケットの乗車変更の事もあり、20分後の新幹線『こだま』で向かう事に。この『こだま』への乗り換えが実は大きい事をスタッフさんから知らされる。僕が今から乗る『こだま』は各駅停車。乗る予定だった『ひかり』はそこそこ駅を飛ばしてくれるもんだから、行き先の浜松まで30分近い時間差が生まれる。つまり僕が浜松に着くのは皆よりも50分遅れという・・・・・ん?あれ?ひかり??『ひかり』に乗る予定だったのか!ちょいと待ってくれ、『ひかり』ならば品川に止まるではないか。僕の家から品川までは5分。僕は40分以上かけて東京駅に向かい乗り遅れ、一本後の『こだま』に。そして走り出した『こだま』はまだ品川に着いていない。なんなんだ、まったく。
車中。なんともやりきりない気持ちになったので、僕はセックスの事を真剣に考えることにした。僕のセックスは上手いのかどうか。気持ちいいのか否か。という辺りを重点的に考えた。
自慢じゃないが僕はセックス中に女の子を「考えられないぃ~!」と叫ばせた事がある。その子は一流大学に通い、いろんな事を考えられる賢い子だったので、その言葉はよっぽどの事だと思われる。僕はその瞬間に自分のテクニックが神の域まで達したと思っていたのだが、風の噂で「女性は8割演技している」と聞いた。なんたることか。
だとすれば、僕の「考えられないぃ~!」も演技の可能性が大いにあるわけで、何の参考資料にもならない。となると自分のセックステクニックは何で測れるのだろうか。
日本中の男を片っ端からヤッて、セックスの順位をつけてくれる大王ヤリマンがいてくれれば話は早いんだけど、そんな奴はいないし、基本的に『大王ヤリマン』が言いたかっただけだし。
大王ヤリマンはいないし、女性は演技をするというし、こうなりゃ自分で測るしかない。
僕のセックスを僕が受けて、他の男のセックスも僕が受ければ、僕のテクニックがどれくらいに位置しているかわかるわけだが、「僕のセックスを僕が受ける」というのは物理的に不可能。ならばハンドテクニック、つまりセックスの際の手の技術にスポットをあてて、「乳首をイジる」という共通の競技で競ってしまおう。それならば僕の手の技術を僕が受けてしまう事が可能になるし、芸人仲間に頼んで本番さながらに僕の乳首をイジってもらい、一般男子のレベルも測れる。自分の手の技術がどれくらいに位置しているかが知れる。
ただ、問題は自分で自分のをイジっている間は攻め手と受け手、両方の思考があるわけで、他人にイジられている時ほど純粋に受け手に集中できない。これだと厳正な審査にならない。どうしたものか。
僕は本当に悩んで、売り子さんからお菓子を買って、再び真剣に考えた挙句、一つの結論に達した。
弟子をとって自分の乳首イジりテクニックを徹底的に叩き込む、僕とまったく違わない動きができるまで徹底的に。その僕の分身に僕の乳首をイジってもらうという算段だ。これなら僕は受け手に集中でき、正しい審査もできようぞ。これだ。
僕のセックステクニックを知るための第一歩は「弟子をとること」。スッキリした。
それから僕は他にもセックスにまつわるいろんな事を考えた。オッパイの事も。男がオッパイを求めるのは「隠しているモノが見たい」というS心からか、「元々は乳児で、求める方が自然」という原点回帰か。後者のソレだと象やキリンなんかの動物も大人になっても求めていないとオカシイような気もしたり、でも少し納得もできたり・・・とにかくいろいろ考えている間に浜松に着いた。
駅からオープニング現場まではすぐで、ギリギリでオープニングに間に合うも私服。皆からイジられ、その中で「車中で寝てたやろ」と梶原。「なんで?」と尋ねたら、僕の口元を指差し「ヨダレ流した跡がある」と。そうか、ヨダレが流れていたか・・。
ただ、梶原よ。
俺がヨダレを流したのは寝ていたからではない。
セックスの事を真剣に考えていたからだ!